(3)測定値が参照値を下回る場合、発生源の稼動状況と被害感の対応関係がない場合
測定された低周波音の音圧レベルが、いずれの評価においても参照値以下の場合は、低周波音については問題ないと考えられる。
しかし、このような場合でも以下の点について再検討を行っておく。
①申し立てのある対象音が発生源の稼働状況と対応して測定されているか
測定時の被害感の有無と測定値との対応関係について確認する。
測定時に被害感の申し立てがなかった場合は、再度対象となる時間帯・場所を聞き取り、再調査の検討をする。
被害感の申し立てがあっても測定データに表れない場合は、他の要因について検討する。
②対象音が100Hz 以上の騒音領域ではないか
低周波音の苦情がある場合でも、原因となる対象音が100Hz 以上の騒音領域であることも考えられるため、騒音計を使用し、100Hz 以上に対象周波数範囲を広げて周波数分析を実施する。
また、専門家との協力を検討する。
③地盤振動が発生していないか
物的な苦情や振動感・めまいといった心身に係る苦情の中には、地盤振動に
よるものが含まれている場合がある。そのため、申し立てのある場所の地表面や床面における振動測定の必要性を検討する。
その際、振動規制法で定められている鉛直方向のみの評価だけではなく、水平方向についても考慮する必要がある。
④苦情者自身の問題(耳鳴りなど)はないか
①~③について検討を行った結果、発生源の稼動状況と苦情内容との対応がない場合は、苦情者自身の問題(耳鳴りなど)の可能性も考えられる。
【注意】耳鳴りについては、本人にとってもその存在があるかどうかはわかりにくいため、本人の申し出を注意深く聞きながら、苦情の内容を医学的・総合的に判断することが必要である。
そのため、最終的には専門家の判断が必要である。
なお、参照値は低周波音の聴感特性に関する実験の集積結果であるが、個人差があることも考慮し判断することが極めて重要である。
低周波音に対する苦情者個人の感覚特性を把握することが本来望ましい。個人の感覚特性の測定については、専門家の協力を得て個別に対応する方法も考えられる。
また、以上の判断によっても問題が解決しない場合もある。
このような場合で
も、時間の経過とともに状況が変化することもある。
苦情者の申し立て内容を聞きながら、時間的な変化を観察し、必要に応じて再度検討する。
場合によっては、専門家に相談することも検討する。