診断と医学的条件
化学物質複合刺激反応 (MCS) や環境病 (EI) は、診断が困難です。 Archives of Environmental Healthが発行した出版物 (Nethercottらの研究) によると、専門家の間で一致した意見として、化学物質複合刺激反応の診断には、以下の条件 を満たすことが必要であるということです。:
1. 化学物質に晒されると症状が何度も再現されること。
2. 症状が慢性的であること。
3. 低レベルの従来の、あるいは一般的な許容量よりも少量の曝露で症状があらわれる。
4. 刺激物を取り除くと、症状が緩和もしくは解消する。
5. 無関連名複数の薬品から症状が起こる。
6. (1999年に追加された条件) : 症状が複数の器官にあらわれる。
化学物質複合刺激反応は、一般に、化学物質に曝露することで起こり、ごく低レベルの曝露に対しても過 敏症が起こるようになります。
症状はひとつもしくは複数の器官系 (神経系、呼吸器系、脈管系 (心臓の障害) など) におこります。
刺激物質は、空気、水や食べ物、皮膚などから体内に入ります。
機能障害の症状
化学物質複合刺激反応の症状には、さまざまな程度のものがあります。
基本的には、頭痛、めまい、疲労、吐き気、呼吸困難、息が詰まる、集中力が乱される、記憶障害、学習障害、湿疹、関節炎様の症状、筋肉痛などの症状が特徴 です。
化学物質複合刺激反応もしくは環境病患者が、香料、クリーニング溶剤、煙、殺虫剤、かび、オフィス機器や車の排気、塗料、新しいカーペット、溶剤、室内の 汚れた空気などの刺激物質に曝露した場合、上記の症状のうちいくつかがあらわれる恐れがあります。
化学物質複合刺激反応患者への環境整備は、個別対応を基本に行う必要があります。
アレルギーの起こり方や症状の重さは、患者によってそれぞれ違うということを肝に銘じてください。
したがって環境整備も個々人でそれぞれ異なるものとなります。
それぞれ違った症状を持つ患者には、それぞれ違った環境整備が必要になります。
診断
化学物質複合刺激反応や環境病などを抱える人には、毒性学、神経学、神経心理学、臨床心理学、免疫 学、アレルギー学、環境医学などをはじめ、これ以外にもさまざまな専門医の診察が必要になる場合があります。
治療
化学物質複合刺激反応の治療にはさまざまなものがありますが、環境管理と刺激物質の回避がもっとも有 効な治療法であるという報告がなされています。
よくある質問
・化学物質複合刺激反応や環境病などによっておこる機能障害に対して、アメリカ障害者法やリハビリテー ション法はどのように適用されるのか?
どちらの法律も、すべての事例を網羅するような一覧を設けてはいません。 そのため、ある人が障害を持っているかどうかを判断するには、アメリカ障害者法の障害の定義を参照するしかありません。
アメリカ障害者法の障害の定義では、ある人に、ひとつ以上の主要な生活行為を相当程度制限する疾病もしくは健康状態があるとき、そのような機能障害の前歴 があるとき、あるいはそのような機能障害があると判断されるときに、その人は障害をもっている可能性があるとしています。
各個人に対しては、個別対応を基本にしなければなりません。
障害をもっているという判断には、さらに、障害の定義を満たしているだけでなく、不可欠な職務機能を発揮することができないと見なされることが必要です。
・化学物質複合刺激反応や環境病とアメリカ障害者法について、これまでに出ている裁判の判例はあるか?
法廷では、化学物質複合刺激反応や環境病などに関連したケースがいくつか審理されてきました。
多くの場合、法廷の判断は障害者の認定について前向きではありません。
しかしながらいくつかのケースでは、このような障害を持つ人をアメリカ障害者法の定める障害者であると認める判例も出ています。
例えば、Davis v. Utah State Tax Common, No. 2:98CV224K; 2000 WL 566897 (D. Utah May 8, 2000)では、同僚の使用する香水や匂いの強いハンドローションが原因で化学物質過敏症を発症したとするユタ州の公務員の主張が認められ、アメリカ障害 者法の定める障害者であるとする判断が下されました。
・職場環境整備とは?
職場環境整備とは、職務、職場環境、常時行う職務の遂行方法などを、障害者の認定を受けた人が、平等な職務上の権利を得られるよう調整することです。
環境整備の目的は、その人の最大能力と、必要とされる職務機能との差を埋めることです。 環境整備のプロセスには、障害者本人だけでなく、雇用主も共に参加し進める必要があります。
JANなど、外部機関に問い合わせて助けを得ることも必要になるでしょう。
環境整備の検討の際に考慮す べき問題点
以下に、環境整備をはじめるにあたって問題となる項目の例を挙げました。 これはあくまで参考であり、決して環境整備のプロセスで生じる問題を総合的に網羅したものではありません。