・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・Mother Jones 2016年2月1日
”香り”は我々を病気にしているのか?
数千の開示されていない化学物質が化粧品と消費者製品で使われており、
あるものは極めて厄介である。
ブライアン・ジョセフ
情報源:Mother Jones, February 1. 2016
Is "Fragrance" Making Us Sick?
Thousands of undisclosed chemicals go into cosmetics and consumer goods and
some are pretty nasty.
By Brian Joseph
http://www.motherjones.com/environment/2016/01/toxic-chemicals-fragrance-cosmetics-safety
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年2月7日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/USA/
160201_MoJo_Is_Fragrance_Making_Us_Sick.html
ニューヨーク州の北部にある科学研究所の教授であるジョイス・ミミラー(57歳)にとって、香りのついた洗剤をひと嗅ぎするとぜんそく発作をおこす。
”私は誰かが私の胸に乗っているように感じます”と彼女は言う。
”それは圧力と息苦しさで窒息するような感じがします”。
ミラーは、製造者がクリーニング用品、化粧品、トイレタリー製品などに添加する秘密の”香り”に敏感な無数のアメリカ人の一人である。
この一般的な名称は、消費者製品に香りをつける化学物質の数千の組み合わせを含んでいるが、これらの化学物質の特定はほとんど開示されない。
数十年間、香料メーカーは、否定的な健康影響についての苦情が激増してきているにもかかわらず、彼らの処方の取り扱いについて企業機密であると主張してきた。
例えば、2009年のある研究は、アメリカ人の3分の1近くは芳香製品の香りによって刺激され、19%がエアフレッシュナー又は防臭剤に暴露すると頭痛又は呼吸困難になると報告している。
今年度は世界で400億ドル(約5兆円)の売り上げが見積もられる香料産業は、その業界団体である国際香粧品香料協会(International Fragrance Association / IFRA)により実施されている自主規制の厳格なシステムを通じて製品の安全性を確実なものにしていると主張する(訳注1)。
しかし、米国モンタナ州ミズーラにある小さな消費者団体 Women's Voices for the Earth (地球のための女性の声)は最近、産業界のやり方にある問題点の概要を報告し、混合物中で使用されている化学物質の有害物質としての評価点を明らかにした。
香料協会(IFRA)の北米支所は、同協会のメンバーである化学会社の巨人 BASF がしたように、この件に関してコメントすることを拒否した。
他の4つのメンバーである Phoenix Aromas & Essential Oils, Premier Specialties, Flavor & Fragrance Specialties Inc., 及び Bedoukian Research は電話での問い合わせに答えなかった。
”香料の中に何があるのか、そして香料は人の健康にとって安全なのかということに関して、科学者らの一部、研究者らの一部、そして消費者らの一部は知っていないという現実がある”と、特に女性に影響を及ぼす有害化学物質をなくすことを使命とする Women's Voices の科学研究ディレクターであるアレクサンドラ・スクラントンは述べている。
”我々は、香料の安全性を確実なものにしているとする産業側の主張に反論した”。
この問題は新しいことではない。
2005年にカリフォルニア州は、製造者に対して、がん、出生障害、又は生殖障害を引き起こすことが疑われる成分を含むどのような製品についても報告することを義務付ける安全化粧品法(Safe Cosmetics Act)を採択した。
しかし、報告に基づくデータベースには会社が企業機密であるとして特定した、香料化学物質を含んで、化粧品の成分は含まれておらず、専門家らはいくつかの製造者は法に全く従わないことを懸念している。
連邦政府レベルでは、化粧品を監督する食品医薬品局(FDA)は製造者らに対して、事前に彼らの成分が安全であることを証明することを求めておらず、FDA は製品の回収を求める前にその危害を証明しなくてはならない。
そして、FDA が化粧品メーカーに彼らの成分を開示するよう求めても、香料と香気の化学物質については企業機密の例外条項がある。
洗剤やエアフレッシュナーのような製品は、消費者製品安全委員会の権限範囲にあるが、同委員会は香料の安全性の審査に積極的ではない。
”政府は、現実的な規制を提供していない”ということが問題であると、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)の政府担当の副代表スコット・ファーバーは述べている。
産業側の自主規制に頼ることが結局誤りをもたらすという多くの事例がある。
2010年、”安全な化粧品キャンペーン”という連合が、よく使われ香水、コロン、及びボディスプレーなど 17品目の独立したテスト実施を委託した結果を明らかにした。
EWG はその結果を次のように分析した。
各製品は、”内分泌かく乱及びアレルギー反応に関連する化学物質”及び”問題ある有害特性を持つ、又は人の組織中に蓄積する傾向のあるその他の化学物質”を含んで、12種以上の開示されていない化学物質を含んでいたと EWG は報告している。
その年の初めに、Women's Voices やその他の団体の圧力の下に、国際香料協会(IFRA)は、そのメンバーによって使用されている約 3,000 種の化学物質のリストを発表した。
Women's Voices は、昨年11月にその分析を発表した。
その結果は:リストされた成分の1,000以上はまた、懸念ある化学物質として公式なリストに挙げられている物質を含んでいる。
例えば国連は、香料化学物質の 3分の1以上について”警告(warning)”という言葉で注意を促し、190種について”危険”と明示的に表示している。
世界保健機関(WHO)の一機関である国際がん研究機関(IARC)は、7種の成分をヒトに対する発がん性が疑われるとしてリストしている。
15種の化学物質は、欧州連合では化粧品での使用を禁止されていることに Women's Voices は言及した。