消費者が激安メニューの良し悪しを見極める目と舌を持つことこそが外食チェーン業界の底上げにつながる!との願いを込めて…。
第1弾は、立ち食い・セルフ式のそばチェーン。居酒屋チェーンやファストフードが大苦戦を強いられる中、比較的、好調をキープしている業界だが、定番メニューの相場は、かけそば・300円、天ぷらそば・400円といったところ。
駅ナカ、駅前の一等地に店を構えることが多く、ランチ時には重宝される。
一方、郊外のロードサイドで出くわすことの多い、個人経営のそば屋の場合、手打ち麺を売りに、かけそばは600円~800円、天ぷらそばは1千円超と相場は上がる。
同じメニューでも、チェーン店はなぜ、個人店の半額で売れるのか?
「個人で運営する多くのそば屋では、そば粉8割+小麦粉2割で製麺された『二八そば』や、そば粉10割の『十割そば』を提供する店が多いですが、チェーンの場合、小麦粉8割+そば粉2割の『逆二八そば』が一般的。ひどいチェーンになると、そば粉を1割しか入れていないケースもあります。
通常、そばを打つ時には、つなぎを入れる必要があります。そば粉にはつながる成分が含まれていないからですね。このつなぎの成分が入っているのが小麦粉。そば粉より断然安く、アメリカや中国の輸入品を使えばさらに原材料費を抑えられる。安価な輸入小麦粉を使い、その分量を8~9割にして大量製麺するのは立ち食い・セルフ式そばチェーンの定番戦略といえます」(河岸氏)
小麦粉9割のそばって…。
「もはや、そばとは言えません。激安そばの正体は、そば風の茶色いうどんです」
そば風の茶色いうどん…。
なんでそんなそばもどき麺がまかり通っているんだ!?
「そば粉の割合を決めるルールがないからです。スーパーなど小売店で販売される乾麺の場合、JAS法(商品に品質表示基準に従った表示をすることを製造業者に義務づける法律)などの法律で『そば粉は最低でも3割は入れなくてはいけない』と定められているのですが、外食店にはこの法律が適用されないんです」
ただ、そば風の茶色いうどんでも、店で麺をこねたり、ゆでていれば、それなりにうまくなるようだが…。
「残念ながら、多くのチェーン店では店内でこねることはありませんし、生麺からゆでることはしません。激安価格を前提にすると、職人を雇う人件費も生麺からゆでるための時間と設備もロスと捉えられてしまうためです」
麺をゆでてない? いやいや、そんなことはないはず。
確か、立ち食いそば屋でそばを注文したら、店員さんが麺を釜ゆでし、シャッシャッとしっかり湯きりまでしてくれて…。
「激安チェーンでは、あらかじめ麺工場でゆで上げられた麺を客からの注文後に軽く湯通しし、つゆをかけて提供します。店内の厨房で見かけるその場面は、ゆでているのではなく、湯通ししているだけ。注文して1、2分で出来上がるけど、麺工場でゆでてから相当な時間が経っているので、そばの風味は損なわれていますよ。
逆をいえば、注文して『今からゆでるので時間がかかります』と言ってくるお店は、ちゃんと麺をゆでている良心的な店といっていいでしょう」
大量の輸入小麦粉を使ったそば風麺と、あらかじめ工場で茹でられた湯通し麺。立ち食い・セルフ式そばの激安の理由はそこにあったわけだが、チェーンによっては同じ価格で品質にこだわりを見せているところもある。
「例えば、『ゆで太郎』(かけそば320円、かきあげそば420円)はそんなチェーンのひとつ。工場ではなく各店舗の店内で粉から製麺し、『ひきたて』『打ちたて』『ゆでたて』の“三たて”にこだわっています。麺に配合するそば粉の割合も5割程度とチェーンの中では突出して高く、その日の湿度や気温によって微妙に水加減を変えたりしている。
食べ比べるとわかりますが、しっかりとしたそばの風味と香りを味わわせてくれますよ。材料と人にコストをかける分、多くの店が駅から離れた家賃の低い場所にありますが、それでも歩いて食べに行こうと思わせてくれるのが『ゆで太郎』です」
他にも、本格派そばを提供するハイコスパチェーンとして新鮮な麺と注文を受けてから揚げる天ぷらが評判の『いわもとQ』(かけそば・330円)、10割そばを立ち食いそば価格で食べさせてくれる『嵯峨谷』(かけそば・290円)の名前が河岸氏から挙がった。
安いだけのそばと、安いのにおいしいそばーー。
この違いを念頭に置きつつ、各チェーンを食べ比べてみるのもいいのでは。
(取材・文/興山英雄)
runより:まぁ立ち食いそばとか近所に無いから行かないけど・・・。