・2015年7月13日 2:00 PM
食物アレルギーの画期的な治療につながるか?アレルギーのもとを減らすブレーキ役を確認、東京大学が発表
マスト細胞に働きかける
食物アレルギーの根本的な治療につながるかもしれない。
東京大学の研究グループが食物アレルギーの症状を表すときの原因につながる免疫細胞、マスト細胞の数を減らす物質を発見した。
アレルギー反応の主役、マスト細胞
東京大学農学生命科学研究科放射線動物化学、村田幸久氏、中村達朗氏らの研究グループが、有力科学誌ネイチャー誌の姉妹紙で、オンライン医学誌であるネイチャーコミュニケーションズ誌2015年7月10日号で報告したものだ。
食物アレルギーは食物に含まれる「抗原」に反応して起こるアレルギー反応。特に子どもで発症率が高い。
症状としてはじんましんやおう吐、下痢が挙げられる。ときには、アナフィラキシーショックと呼ばれる重い症状を起こす場合があると知られている(アナフィラキシーショック、男性よりも女性で強いのはなぜ?を参照)。
場合によっては死亡するケースもある。
日本における食物アレルギーとなる人は増加の一途をたどっており、その治療法の開発が急がれている。
体内に侵入した抗原に反応
アレルギー反応の主役となる免疫細胞として「マスト細胞」と呼ばれる細胞がある。
食物アレルギーの発症や進行に伴って、マスト細胞は胃腸をはじめとした組織で増える。
アレルギーは食物の抗原に対して、抗体を作り出して反応が起きる。
マスト細胞では食物の抗原に対する抗体を使って、体内に侵入してきた抗原を察知して、大量の炎症を引き起こす物質を放出して、アレルギーの症状を引き起こす。
食物アレルギーを起こすもの
食物アレルギーの主役となるマスト細胞は、炎症を引き起こすヒスタミンやセロトニンといった物質とともに、プロスタグランジンD2(PGD2)という物質を大量に作り出していると知られている。
PGD2が食物アレルギーに与える影響は分かっていなかった。
東京大学の研究グループは、PGD2 を作るための酵素をなくしたネズミによる動物実験を実施。
PGD2が食物アレルギーにおいてマスト細胞の数や働き、症状にどのように影響するかを調べた。
ブレーキとなるPGD2
正常な野生型のネズミに、卵白に含まれるアルブミンを連続して食べさせると、食物アレルギーの症状を表すようになる。
胃腸のマスト細胞の数も、食物アレルギー悪化に伴って増えた。マスト細胞はPGD2を作り出す酵素を積極的に生産していた。
合成酵素の遺伝子をなくしたネズミに、卵白アルブミンを食べさせたところ、野生型とべると食物アレルギーの症状が劇的に悪化すると分かった。
胃腸のマスト細胞の数も増えていた。
マスト細胞が作るPGD2は、食物抗原の刺激に対するマスト細胞自身の数の増加を抑えていたわけだ。症状悪化を防ぐブレーキになると分かった。
画期的な治療に?
今後、PGD2がどのようにマスト細胞の増加を抑えるのか、メカニズムは?
うまく利用できればマスト細胞を減らす有効手段となり得るわけで、食物アレルギーの画期的な治療法につながる可能性はあり得る。
文献情報
Nakamura T et al.PGD2 deficiency exacerbates food antigen-induced mast cell hyperplasia. Nat Commun. 2015;6:7514.
runより:今後に期待ですね。