農薬のドリフトが有機農業を脅かす | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・NPR news 2015年7月31日
農薬のドリフトが有機農業を脅かす

情報源:NPR news, July 31, 2015
Pesticide Drift Threatens Organic Farms
Kristofor Husted
http://www.npr.org/sections/thesalt/2015/07/31/427857297/
pesticide-drift-threatens-organic-farms

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
掲載日:2015年8月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_15/
150731_npr_Pesticide_Drift_Threatens_Organic_Farms.html

 この記事に関する放送(英語)を聞くことができます。 NPR (National Public Radio)

 チャート・ハロー農場は、ミズーリ州中部の背の高いいくつかの並木と近くの川に囲まれてたたずんでいる。

エリックとジョアンナのロイター夫妻は 2006 年以来、ここで有機農業を営んでいる。

そのことは彼らは遺伝子組み換え作物は栽培せず、わずかな種類の承認された農薬と肥料だけを使用することができることを意味する。

 ”私たちは、今まで約1エーカー半(約6,000平方メートル)の土地で非常に集中的に管理された農作物を栽培してきたので、その土地は非常に生産性が高い”とエリック・ロイターは言う。

 彼らの隣人たちは数エーカーの畑で従来のトウモロコシと大豆を栽培しており、ほとんど問題なく付き合ってきた。

しかしそれは 2014年7月1日の夕方までのことであった。

ジョアンナ・ロイターはブロッコリーを移植しているときに、なにか奇妙な音が響くのに気が付いた。

 ”私は、この大きな騒音を聞きました”と彼女は言う。”それは北から南に響きました。私は大声で’あれは何の音なの’と叫びました”。

 彼らは、それが農薬散布用の飛行機であり、彼らの土地に異常に近づいて飛んでいることがわかった。

頭痛と痛みを感じた直ぐ後で、風が何か化学物質のようなものを彼らの土地に吹き付けたことを知った。

それが何なのかを知らずに、彼らの有機作物の信頼性(出所の正しさ)に疑義が生じるのではないかという不安にとりつかれた。

 ”私たちは、隠さず、正直であることがとても大事であると感じているので、私たちの作物を市場に適切に出せるのか心配になりました”と、エリック・ロイターはいう。

”私たちは、今後数年間、持続可能な、化学物質のない農場として市場に売り出すことに少し違和感を感じました”。

 彼らは、今年は作物を売らないことを決め、汚染された土壌は来年は元に戻ることを期待している。それは彼らのように小さなビジネスにとっては大きな打撃である。

 そして農薬については? 彼は警告の手紙を受け取った。隣の農場は、面会したいという私の要求に応じなかったと、彼は言う。

 ”私たちは、この種の汚染に対して、考えていたより影響を受けやすいことがわかりました”とエリックは言う。

”それは、私たちのような農場にとって大きな危険をもたらします”。

 アメリカでは、通常、農民は作物を雑草や害虫から守るために毎年9億ポンド(約40万トン)近くの農薬を使用する。

時にはこれらの化学物質は隣の畑にまで漂流し、有機農場の作物を台無しにする。

 在来農法の農場もまた、望まない農薬に襲われるが、最も影響を受けるのは400億ドル(約5兆円)の有機農業である。

ますます多くの有機農場が出現しているので、この種の争いはもっと一般的になるであろう。

 全国農薬情報センターのカチ・ブールは、一般的な農薬ドリフトが全国20,000近くの有機農場にどの様な影響を及ぼしているのかを明確に描いたものはないと言う。

 ”もし、もっと一貫した報告があれば、データはもっと良いものになり、恐らくリソースの割り当ても増すでしょう”と、彼女は言う。

 農薬のドリフト調査に責任ある各州の機関、一般的には農業局又は同等な機関は、詳細な調査を異なったやり方で実施する。

 ミズーリ州農業局の報道官サラ・アルセガールは、同局は最善の努力をするが、その地域での農薬散布の記録収集はもちろんラボでの分析のため時間がかかるので、時には限定されることがあると言う。

 そのことが、有機農業者らが、ドリフト調査を優先し、無頓着な農場により厳格な罰則を科す国家規制を求めている理由である。

農民らは、農薬ドリフトの調査は数か月間、だらだら続くことがあり、罰則も異なると言う。

 ”農薬ドリフトが連邦政府により取組まれれば、私たちへの対応はもっとよくコーディネートされ、潜在的により良い防止戦略をもち、それらが起きた時に時宜を得た対応をすることができるであろう”と、有機農業協会のネイト・ルイスは言う。

 ルイスは、特に有機農業の作付面積は増大し、農民は農薬ドリフトをもっとよく知るようになるので、ドリフト問題は政策的取り組みの中心に位置づける必要があると言う。

現在、農薬ドリフト調査又は資源の概要を述べる連邦政府の政策はない。

 アメリカ最大の農業圧力団体である AFBF (American Farm Bureau Federation)のポール・シェルゲルは、もしドリフト問題が拡大しないなら、ドリフト事故を取り扱う現状の州規制は機能している。焦点は、教育の改善とドリフト低減技術に置かれるべきであると述べている。

 ”私は、問題は有機農業分野にあり、彼らは全体的に農薬を受けいることに不本意であると思う”と彼は述べている。

最終的には、農薬は食料生産の一部であり、全ての農場は通り抜けなくてはならないと彼は言う。

 最近、有機農家マルゴット・マクミランは、彼女のぬかるんだ農場を通って、チャート・ハローから約25マイル(約40 km)を歩いた。

ミズーリ州中部にあるテラ・ベラ農場という彼女の農場で、彼女はあらゆる種類の野菜を栽培している。

 最近の雨の後の見回り点検で、彼女はぶどうに農薬被害の可能性があることを見つけた。

”葉っぱがこのように丸くなるのが特徴で、厚さも薄くなるの”と葉っぱを手の中で揺すりながら彼女は言う。

”私にはそれらは小さな拳のように見えるの。くわばら、くわばら”。

 マクミランは、一群の葉っぱが丸くなることを何度も経験している。

2014年には、農薬ドリフトで彼女はトマトに 25,000 ドル(約300万円)の損害を被った。

州の農業局はドリフトが起きたことは認めたが、犯人を特定することはできなかった。

 たとえ彼女の汚染された作物が枯れずに生き残っても、それは最早、有機作物として売ることはできない。

農薬ドリフトはマクミランや多くの有機農業家を苦境に陥らせる。

”私たちには、それをどうすることもできない”と彼女は言う。

 今年は、彼女の作物を”防御的に”栽培せざるを得なかった。今では大きな灌木が道路側からの風を遮っている。彼女は作物を他の農場から離して、丘の尾根越しに移し替え、トマトは温室の中に移した。

 ”農薬を使わない人がこの問題に巻き込まれている”と彼女は言う。

 マクミランの農場はまだ被害を受けやすいことを彼女は知っている。

連邦政府の政策なら助けになるであろうが、今のところは、たとえそれが確実ではなくても”防御的に”栽培することが彼女ができる最良のことであると、彼女は言う。

 この記事は、農業と食料生産に焦点を当てる公共ラジオ報告の提携先Harvest Public Media (ハーベスト公共メディア)によるものである。