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線維筋痛症
監修:東京医科大学
八王子医療センター
リウマチ性疾患治療センター教授
岡 寛 先生
線維筋痛症とは
線維筋痛症は、一般的な検査をしても原因が見つからないにもかかわらず、全身の強い痛みやこわばり、睡眠障害、うつ状態などさまざまな症状が生じる病気です。
脳の働きの誤作動が原因と考えられており、早期に発見・治療して 症状の軽減を目指します。
原因
線維筋痛症の原因はまだよくわかっていませんが、有力な説として、脳が痛みの信号を感じる機能に障害が起きていると考えられています。
脳には痛みの信号を伝える機能(アクセル)と信号を抑える機能(ブレーキ)が備わっていますが、何らかの原因でこの機能に「誤作動」が生じ、ブレーキが効かない状態もしくはアクセルを踏み過ぎた状態になると、通常では痛みを感じない程度の弱い刺激でも痛みを感じるようになります。
このように、脳機能の誤作動が痛みの原因であるため、線維筋痛症では痛みやこわばりなどの症状が見られる部位を検査しても、異常は見られません。
こうした脳の機能の誤作動は、心理的・社会的なストレスや外傷がきっかけとなって発症する事が多いと考えられています。
ただ、ストレスを受けた人すべてが線維筋痛症を発症する訳ではなく、まだよくわかっていないことも多いため、現在でもさまざまな議論・研究が行われています。
線維筋痛症の主な症状は「強い痛み」です。
線維筋痛症は、痛みの部位が全身であったり、身体の一部であったり、痛みの部位が流動的です。
痛み以外の症状では、「疲労感・倦怠感」、「こわばり感」、「睡眠障害」、「うつ状態」などをはじめ、さまざまな症状が報告されています。
こうした症状は悪影響を及ぼし合って進行・慢性化しやすく、その結果、日常生活に支障をきたすこともあります。このため、線維筋痛症は早期に発見し治療を開始することが重要です。
診断法
線維筋痛症は一般的な血液検査や画像検査などでは異常が見つかりません。
そのため、線維筋痛症の診断のためには、主症状である痛みの範囲と強さを調べます。
最近では、線維筋痛症の簡易的な診断(「スクリーニング」といいます)ができる質問票も活用されています。
診断基準
線維筋痛症の診断は、(1)広範囲(右半身/左半身、上半身/下半身、体軸という身体の真ん中)の痛みが3か月以上続いていること、(2)図に示した18か所(圧痛点といいます)を指で押して、11か所以上で痛むこと、が条件となります。
ただし(2)については11か所以上なくても、医師の判断で線維筋痛症と診断されることもあります。
診断のつきにくい線維筋痛症
線維筋痛症は早期に診断して治療開始するのが重要であるにもかかわらず、従来の一般的な検査では身体に異常が見られないため、正しく診断されにくいという課題があります。
もし、質問票で痛みをチェックして「線維筋痛症の可能性がある」という結果だった場合は、なるべく早くに医師に相談するようにしましょう。
治療法
線維筋痛症の治療では、運動療法や認知行動療法、心理療法に薬物療法などを組み合わせる多面的アプローチが行われます。
線維筋痛症に対する特効薬はないため、少しでも効果があり症状がやわらぐような治療法を、医師と患者さんが一緒に探していくことが大切です。
線維筋痛症だけでなく他の病気も見られる場合は、その病気を治療することで線維筋痛症の症状も改善することがあります。
線維筋痛症に対する多面的アプローチ
線維筋痛症は原因がよくわかっていないため、すべての患者さんに共通した治療方法はありません。しかし現在、新しい治療薬も登場しています。
線維筋痛症友の会によると、線維筋痛症の治療には、運動を伴った多面的アプローチが推奨されています。
それは患者さん個々に見合った適度な運動と薬物療法を組み合わせることで、治療効果を高める試みです。痛みが強い患者さんでは、薬物療法によって痛みをやわらげ、運動が可能な状態を作ります。
その後、適度な運動によって筋肉の強化や規則的な日常の睡眠を確保し、線維筋痛症の徴候を改善させます。
また、病気によって引き起こされた情緒障害を心理学的方法(心理療法など)によってサポートし、患者さんの痛みを悪化させるストレスを軽減します。