佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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滋賀医大病院精神科のインターネットサイトにある折れ線グラフ「不登校離脱率」が、その第一弾。2012年に思春期青年期外来を受診した不登校の患者38人のうち、受診後4か月で約半数、半年で82%が、不登校から離脱して授業を受けられるようになったことを示している。

まだ少数の患者の結果に過ぎず、グラフを補強する情報も不足しているが、不登校の子や親にとっては病院選びの重要な手がかりになるだろう。

稲垣さんは「治療成績の集計と開示は、我々が提供している治療法を改めて検証するよい機会にもなる。今後、病院選びの参考になる情報を多く開示し、他の病院にも波及するように努力したい」と話す。

 シンポジウムでは、がん治療などの際の外科医の説明と比べ、精神科医の対応があまりにもお粗末なことに話題が及んだ。

この差が生じる理由について、シンポジストから「がん治療は診療報酬が多いので、外科医が説明に1時間かけても十分にペイできる。精神科の治療は診療報酬が少なく、同様の対応は難しい」との声があがった。

診療報酬の問題は、確かに大きい。

良心的な精神科医が、薬の説明や精神療法に時間をかければかけるほど、首を絞められていく状況はとても見ていられない。

良い医師が報われる仕組みが必要だろう。

 だが、会場で討論を聞いたNPO法人の関係者からは、シンポジウム終了後、次のような指摘もあった。「がん治療は患者を確実に治している。回復して社会に戻った人は、また働いて税金を納めるなど社会に貢献している。

だからこそ、国民はがん治療に多くの診療報酬を払うことを認めている。

精神医療はどうか。患者を本当に治せる医師はどれくらいいるのか。抑うつ状態で精神科にかかっても治らず、休職や転職を繰り返し、結局、働けなくなる人が多い。まずは患者をきちんと治し、治療成績を社会に堂々と示した上で、診療報酬のアップを要求するべきではないか。結果を出せず、展望も示せないところに金をつけてくれるほど、社会は甘くない」

 精神科の治療成績公開の動きは、他にもある。

切り口を変えた斬新な試みも計画されているので、公表できる段階になったらお伝えしたい。

佐藤光展(さとう・みつのぶ)
読売新聞東京本社医療部記者。群馬県前橋市生まれ。神戸新聞社の社会部で阪神淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)などを取材。2000年に読売新聞東京本社に移り、静岡支局と甲府支局を経て2003年から医療部。

取材活動の傍ら、日本外科学会学術集会、日本内視鏡外科学会総会、日本公衆衛生学会総会等の学会や、大学などで「患者のための医療」や「精神医療」などをテーマに講演。著書に「精神医療ダークサイド」(講談社現代新書)。

分担執筆は『こころの科学増刊 くすりにたよらない精神医学』(日本評論社)、『統合失調症の人が知っておくべきこと』(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)、『精神保健福祉白書』(中央法規出版)など。