・http://www.mededge.jp/a/psyc/10563
慢性疲労症候群(SEID)とは原因不明の疲労が生じる病気。米国では国を挙げてその背景を探る動きが活発になっている。
名前を変えようとする動きもある(「慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)」、新しい診断基準と名前の提案、米国IOMが発表を参照)。
この病気による原因不明の疲労は、アスリートが運動したときに筋肉で生じる「灼熱感」と共通したメカニズムがあるようだ。
今後、治療につながるのかもしれない。
筋肉の代謝物に着目
米国フロリダ保健大学の研究グループが、痛みの医学についての専門誌ペイン誌で2015年3月12日に報告した。
研究グループは、慢性疲労症候群の39人とこの病気を持たない29人を対象として、利き手側のひじの内側に血圧測定のときのカフを巻いてもらって、握力計を思い切り握ってもらった。
さらに、50%の力でできる限り長く握ってもらった。
握力計での運動の最後に、血圧測定のためのカフを膨らませて、腕の筋肉から出る乳酸やアデノシン3リン酸などの代謝物が手から腕にかけて封じ込めるようにする。
代謝物によって生じる疲労感が脳にどれくらい伝わるかを検証するためだ。
参加者の疲労と痛みについて30秒ごとに調べるようにしている。
さらに、30分後、血圧測定のためのカフを膨らませない状態で、もう一度握力計を握ってもらって、疲労と痛みについて調べた。
代謝物が血流に乗って腕にはたまらないので、疲労への影響を検証することができる。
代謝物が疲労につながる
その結果、慢性疲労症候群のある人はより強い疲労と痛みを感じると分かった。
最初の血圧測定のカフをまいた状態のとき、慢性疲労症候群のある人を対象に、感じる疲労を0から10までの数値のどれくらいに当たるかを評価してもらうと平均5.5となった。
一方で、慢性疲労症候群ではない人は平均1.5となった。
慢性疲労症候群の人が強い疲労を感じていた。
一方で、30分後に血圧測定のためのカフを巻かなかった場合、この疲労度は巻いた場合よりも低くなっていた。
代謝物がたまった状態のときに、慢性疲労症候群の人は、その代謝物のための疲労をより感じやすいと研究グループは見ている。
その上で、「慢性疲労症候群の人の疲労が筋肉と関係すると初めて示すことができた」と説明している。
乳酸やアデノシン3リン酸という代謝物が蓄積すると、慢性疲労症候群の疲労にもつながっているというわけだ。
メカニズムは、アスリートが強い運動をしたときに生じる疲労や痛みと同じという。
慢性疲労症候群の疲労は、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質に原因があるといった報告も最近あったばかり(慢性疲労症候群の原因に手掛かり、異常があるのは「サイトカイン」かを参照)。
今後、さらに原因は分かってくるのだろう。
より明確に原因が見えてくると、有効な治療にもつながってきそうだ。
文献情報
Staud R et al. Study shows why exercise magnifies exhaustion for chronic fatigue syndrome patients. Pain. 2015 Mar 12.