デンマークEPAの報告書多種化学物質過敏症16 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・7 診察と診断の方法
 7.1 診察の方法
 7.2 MCSの診断
 7.3 コメントと結論


7.1 診察の方法

 下記は、今日、アメリカでMCSの診断のために最も使用されている方法の概要である。

それらは、曝露、影響及び発症のためのバイオマーカーを見つけて用いることに関わる。

バイオマーカーは健康に対する環境要素の影響を調査する上で最も重要なツールである。

それらは生物学的システムにおける変化及び/又はMCSのような環境病を示すことができる。

 曝露のバイオマーカーは、ある曝露が起きたことを示す。

体が吸収した化学物質、又は血清、尿、又は組織サンプル中の誘導物が測定される。

すなわち、分析的手法が、重金属及びホルムアルデヒド、芳香族炭化水素類、殺虫剤、ダイオキシン類、PCB類のような多くの有機化学物質への曝露に関するバイオマーカー、及び、例えば、タバコの煙のような複雑な曝露のためのバイオマーカーを検出するために工夫される。

 影響のバイオマーカーは、曝露した人の器官の機能又は健康の定量的及び定性的変化、例えば、肺機能の変化、抽出した組織サンプルに対する遺伝毒性の影響、炎症性細胞の繁殖又は噴出、又は組織サンプル又は尿、血液サンプル中の兆候物質を示す。

 いわゆる環境チャンバー(climate chamber)と呼ばれる特別の刺激チャンバー内での刺激テストはMCS特有である。

環境チャンバーはMCS患者を調査し治療するため及び屋内環境研究のために環境及びその他の医師等により開発された。

環境チャンバーの建設、保守及び運用には高い技術的及び科学的標準[4]が必要なので、環境チャンバーは非常に高価なものとなる(Selner, 1996)。アメリカでは3つのよく知られた研究センターがMCSとGWS研究のために環境チャンバーを使用している。

 デンマークでは環境チャンバーはデンマーク技術大学、国立労働衛生研究所、及び、オーフス大学労働環境医学研究所で見ることができる。

これらの環境チャンバーは、屋内環境研究だけのために使用され、MCS患者の診察又は治療のために使用されることはない。

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院国立病院耳鼻咽喉科(Risgshospitalet)において、医師たちは、キシレンを用いて”開放”刺激実験を実施している。

前庭器官での反応(前庭自動回転テスト、VAT)と他の生理学的パラメーター(血圧及び脈)が刺激の前、最中、及び後に測定される。

このテストはMCSのスクリーニングのためのツールとして開発された。

正常値は参照グループから得る。暫定的結果は症例の80%でVAT陽性とMCSとの整合性がある。

この手法は完全には標準化されておらず、さらに開発の必要がある。

暫定結果は会議において発表された(Holmelund, 1993)。

7.2 MCSの診断

 MCSは科学的医学基準を用いて疾病(disease)として認められない限り、その状態は、WHOの国際疾病分類第10版(ICD-10)に登録されない。

したがって、それはデンマークの統計に含まれない。

 アメリカでは、長年、MCSの問題に取組んできたいくつかの分野からの34人の医師と研究者からなる主導グループが、アメリカにおけるMCS診断に関する停滞からいかに脱するかを提案した(Consensus, 1999)。


 その提案は下記を含む: ?臨床的定義の標準化
?診断のための臨床的計画案
 臨床的定義は6項目を含み、そのうち5項目は89人の臨床医師と研究者(アレルギー学者36人、産業医23人、臨床環境医師20人、内科及び耳鼻咽喉科の専門家10人)によって承認された(Nethercott, 1993)。この主導グルプは下記6項目を提案した。



表7.1 MCSの臨床定義のための6基準


1.症状は化学物質の反復曝露で再現性がある。
2.状態は慢性的である。
3.低濃度(患者の以前の耐性より低い)で体調不良が生じる。
4.曝露源が除去されると体調不良は改善されるか消える。
5.様々な関連性のない化学物質が体調不良を引き起こす。
6.病気の症状はいくつかの器官にまたがる。

 このグループは、全ての6基準に合致する場合は、たとえ他の病気(例えば、ぜん息、偏頭痛、慢性疲労症候群、など)があっても、MCS診断は確実であるということを提案した。

 このグループはまた、臨床計画と研究計画のための具体的な提案を行った。

その提案はいくつかの病気の研究を結合する可能性を含んでいる。


表7.2 臨床計画のための提案


1.承認されたスクリーニング用質問書
2.異なる診断の場合に選択されるべき病気
3.臨床化学パラメータ(ピアレビューされた文献中で発表されたもの)、たとえ、それらはMCSのバイオマーカーとして一般的に受け入れられていなくてもよい
4.定量的及び定性的な方法を用いての全てのMCS症例のフォローアップ


表7.3 研究計画のための提案


1.患者グループを選定するためのMCS基準(包含/除外基準が示されること)
2.診察された患者グループの完全な記述(病人及びコントロール)
3.他の環境病との重複の登録と報告

 アシュフォードとミラー(2002)は、環境負荷と化学的過敏性を登録するために、健康不具合、化学物質耐性、症状のために変更を余儀なくされた生活条件、などに関する質問書の標準フォームを発表した。

 クツオギアニスとダビドフ(2000)は、症状、タイプと期間、曝露、匂い及び他の要素に対する過敏性など、6つの分野におけるMCS関連の問題点を登録するために、単純な生物測定学的質問書を開発した。

この方法はデンマークにおける状態の登録に適している。比較的簡単な方法で、以前に溶剤に曝露した人々中から、典型的なMCS症状をもつ人々を見つけることができる。


7.3 コメントと結論

 これまでに、MCS診断を確認する又は論駁するいくつかの手法が提案されたが(例えば、生物免疫分析、脳機能の電子的登録、質問調査、等)、現在までの所、まだ満足すべきものではない。

 デンマークの健康介護システムには、MCSの診察についても、診断についても、そのガイドラインが存在しない。

本章は、デンマークにおける将来の調査のための示唆としての提案を含んでいる。

 デンマークがMCSについてのよりよい知識を獲得することが重要であり、環境病及びMCSに関し最先端を維持することは可能である。

 最初に病気を定義するデンマーク基準を、そして可能なら、その病気を登録する方法を確立すべきである。