・5.2 罹患率
ほとんどのアメリカの調査はMCSの罹患率に関するMCS患者の2つの共通な特性を確認していることが文献から判明した(Cullen, 1992; Sparks, 1994))。
1.ほとんどの患者は女性である。
2.症状がはじめて出たのは、彼等は30歳以上の時である。
クラウツアー(1999)は、彼の調査の中に多くのカリフォルニアの人々を含めた。
しかし彼は、肯定回答の中に、人種、居住地、教育、又は社会的立場の違いを見出さなかった。
ミラーとミッツェル(1995)は、MCSの社会経済的側面を調査した。
MCS(カレンの定義)の人112人のうちの83%が30歳以降に病気が始まった。81%が病気が始まった時にフルタイムで雇用されていたが、調査をした時には12%になっていた。
このグループのほとんどの人たちが症状のために、職業を変えざるを得なかった。40%が助けを求めて10人以上の医者の診察を受けていた。
5.3 環境医師と患者組織による有病率
アメリカの環境医師とMCS患者組織の経験に基づく記述は、MCSの発症頻度に関する多くの情報を含んでいる。
アメリカの生態環境病院のスパイカー(1995)はMCS患者の平均年齢は40歳であり、77%が女性である。
20年間に30,000人以上の環境病患者から得た彼の経験を述べている”化学物質過敏症”という4巻からなる本の著者であるレア(1992)は、これらの数値を導き出した。全ての患者がMCSと診断されたわけではない。
その罹患率は病気と症状の定義に基づいており、それらは他の文献で比較することはできず、従って、本報告書の中で使用することはできない。
5.3.1 患者組織によるデンマークでのMCS発症頻度
デンマークMCS患者組織はデンマークの人口の4%(200,000人)がMCSであると推定している。
この数値はアメリカの発症頻度に基づいている。
この組織は、職場での頭痛の症例の多くは化学物質に曝露したことによる非認定MCSの症状かもしれないと述べている。
5.4 コメント
アメリカ、カナダ、及びヨーロッパのMCSの存在に関する疫学的文書がある。
発症頻度はアメリカでは約0.2~6%である。
ヨーロッパに関しては確かなデータはない。
スウェーデン[1] とドイツ[2] の両国では、MCSの発症頻度に関する全国調査が2001年に完了した。
そのデータは、本報告書の最終編集が行われた時にはまだ発表されていなかった(Annex H 参照)。
デンマークの産業医たちはデンマーク全人口におけるMCSの有病率は全体として0.1~1%と推定している。
デンマークに比べてアメリカが示すもっと高い有病率の数値には多くの理由があり得る。
ひとつは、アメリカ人は化学物質により頻繁に、とりわけ屋内で曝露している可能性がある。
もうひとつはアメリカにはMCSの知識をもった環境医師が比較的多く、彼等がMCS患者を診断し治療するが、一方、スカンジナビア諸国では、少なくともMCS患者に対応するのは産業医学及び環境医学における全くのスペシャリストであり、これらの患者を診る彼等にとって、MCS診断は議論の余地があるということが理由かもしれない。
アメリカでは、MCSは多くの場合、約40歳の女性が屋内で発症する。
アメリカとデンマークの産業医療患者グループにおけるMCSの有病率はほぼ等しく、1~12%である。
これらの数値は、一般の人々よりMCSを獲得するリスクが大きい限られたグループに当てはまる。
ヨーロッパにおけるMSC研究を強化する可能性に関して、最も重要な仕事のひとつは、MCSの有病率に関するもっと信頼性のある数値を得ることであろう。
表5.2 デンマークとアメリカにおけるMCSの有病率
デンマーク アメリカ
全人口に対する有病率 1%以下(推定) 0.2~6%