・1. はじめに
1. はじめに
1.1 この報告書について
1.2 情報源
1. はじめに
最近の数十年の間に新たな化学物質と製品の製造及び使用が増大している。環境と人に潜在的に有害である化学物質が、環境中のいたるところで見出されている。
ほとんどの化学物質は、その有害影響がほとんど知られておらず、物質の制限は通常、その有害な影響が新たに判明し経験した後に行われるので、物質の規制はしばしば”後手”に回わる。
この問題を解決し、失った時間を取り戻すための政策が必要である。
新たな化学物質が大きな社会経済的便益を提供する時には健康問題について主張することは難しく、そのために健康問題が十分に報告されないことがある。
しかし有害な影響が十分に報告されていない場合でも、予防的措置(precautionary approach)を導入することで、自然と健康に対する大きな配慮を可能にしてきた(Beltram, 1998)。
上記の問題はまた、ほとんどの人々にはなんら害をもたらさないような非常に低濃度の化学物質に曝露しても体調が悪くなる一部の人々の健康リスクに関連している。
これらの人々の状態は多種化学物質過敏症(MCS)と呼ばれている。MCSの人は、通常の人は感じない非常に低い濃度の多くの数の化学物質に反応し、その結果、有毒影響を被る。
最近の数十年間の毒物研究により、以前は”安全”であると見なされていた濃度でも、健康に害を及ぼす化学物質の事例が示されてきた。
複数の又はひとつの化学物質と他の環境要因の組み合わせは、ひとつの化学物質自身の影響と比べて、心身への悪影響を増幅することがある(例えばアスベストとタバコ、有機溶剤と騒音)。
リスクに曝される可能性のあるグループ及びその現象の背後にある機序を特定するために、そしてまた、予防措置の緊急性を確立して、どのような措置をとるべきかを決定するために、これらのことがらは調査研究されなくてはならない。
先に進む前に、当局は化学物質への曝露間の関連性、又は低濃度での化学物質への曝露と報告されている症状の組み合わせに関して文書化しておく必要がある。
MCSについての既存の文書は、疾病と認知するための国際的に合意された医療科学基準に合致していない。
当局は予防措置の基盤を持っていない。
この疾病が近い将来、認知されるとう予想はない。患者組織とMCSに苦しむ人々を除けば、デンマークではMCSについてほとんど目が向けられていない。
1.1 この報告書について
この報告書が想定する読者は、環境及び健康分野の当局担当官、実務家、及び活動家である。
この報告書の目的はMCSに関する既存の知識を広く普及させることである。
この報告書は、MCSに関する科学的文献及び専門家委員会の勧告の検証、及びいくつかの国々の環境と健康当局への問合せ結果に基づいている。
この報告書は、MCSに関連する将来の管理のためのデンマーク環境保護局(EPA)の評価の出発点及び基礎となるべきものである。
課題の定義
この報告書は下記を明らかにする:
1.低濃度の化学物質によって引き起こされるMCSに関する客観的な文書の存在
2.MCSを引き起こす機序に関する客観的な文書の存在
3.MCSに関し特にデンマークに関連する化学物質及び環境曝露
4.予防措置/保護の機会
この報告書は、他の環境病ではなく、MCSに関連するできるだけ多くの重要な情報を含む完全で最新の問題を記述する。
この報告書は科学論文ではない。
しかし提供する情報と参照リストはMCSに関連する科学的使用を意図している。
科学的用語と略語は別途にリストされている。
1.2 情報源
データベース Medline (訳注: 医学文献検索システム) には化学物質過敏症及び多種化学物質過敏症に関し、1991年~2001年の期間に388 件の参照例がある。
この課題に関するいくつかの検証と報告書がこの期間に作成された。
この報告書の最も重要な情報源は:
1.欧州連合理事会環境DG報告書(欧州報告1994-公式には発行されず)
2.MCSに関する予備報告書(多種化学物質過敏症に関するアメリカ機関横断ワーキング・グループ)(機関横断報告書1998年-公式には発行されず)
3.化学物質曝露-低濃度、高リスク(アシュフォードとミラー) (Chemical Exposures. Low levels and high stakes(Ashford & Miller 2. ed. 1998)
4.イギリス安全衛生環境(HSE)のための化学物質過敏症の検証((UK review, Graveling 1999)”グラベリング報告書”
5.労働医療におけるデンマークの経験 1981-2001
6.2001年までの文献
この報告書は主に機関横断報告書とグラベリング報告書に基づいている。