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アッヴィとエーザイ、「強直性脊椎炎」について理解を深めるプレスセミナーを開催、患者の体験談や実態調査の結果も紹介
2014.07.02 20:24 更新
アッヴィとエーザイは、「強直性脊椎炎」をテーマにしたプレスセミナーを6月26日に開催した。
セミナーでは、順天堂大学医学部 膠原病・リウマチ内科助教の多田久里守先生が、強直性脊椎炎の特徴的な症状や治療方法、早期診断の重要性について説明した他、強直性脊椎炎の患者会である「日本AS友の会」の田中恵子さん(仮名)に、疾患の診断前後や生活の実態などを語ってもらった。
また、今年4月に同患者会と共同で実施した患者調査結果について、日本AS友の会 事務局長で自身も患者である順天堂大学医学部 整形外科・スポーツ診療科 非常勤講師の井上久先生が紹介した。
まず、順天堂大学医学部 膠原病・リウマチ内科助教の多田久里守先生が、「原因不明の全身疾患 強直性脊椎炎とは」と題した講演を行った。
「強直性脊椎炎は、主に背骨(脊椎)や(仙腸関節)、臀部(坐骨神経)、股や肩の関節などに慢性炎症が起こり、これらの部位がこわばって動かなくなるリウマチ性の疾患の一つである。
通常、10~20歳代に発症することが多く、AS友の会の集計によると発症時の平均年齢は25.29歳となっている。
男女比は、3~4対1と男性に多い傾向がある」と、強直性脊椎炎とはどのような病気であるかを説明。
「強直性脊椎炎の発症は、HLA-B27という特殊な白血球の型と関連が高く、強直性脊椎炎の患者におけるHLA-B27の陽性率は8~9割といわれている。しかし、HLA-B27陽性の人すべてが発症するわけではなく、HLA-B27をもって生まれた人に、感染など後天的素因が誘引となって免疫異常が生じた結果、発症すると考えられている」と、強直性脊椎炎の発症機序についても言及した。
「強直性脊椎炎で最も多い症状が、炎症性背部痛である。炎症性背部痛では、腰や背中の痛みが、体操などの運動によって改善され、安静では改善されず悪化してしまうのが特徴。腰痛全体の15%を占めるとされている」と、強直性脊椎炎の多くが腰痛や背部痛を伴うという。
「また、股関節や膝関節、足関節、手関節に痛みを生じる末梢関節炎、座骨結節や胸鎖関節、肋骨、鎖骨、腸骨稜、踵骨などが痛む付着部炎、手指や足趾がソーセージのように腫れる指炎なども特徴的な症状となっている。
関節炎の他にも、眼の前部ぶどう膜炎、大動脈炎などの心疾患、肺線維症などの呼吸器疾患、皮膚病変の乾癬、炎症性腸疾患、神経症状、腎疾患を合併するリスクも高まる」と、強直性脊椎炎の代表的な症状について紹介してくれた。
では、強直性脊椎炎には、どのような治療が行われているのだろうか。
「強直性脊椎炎の治療法としては、運動機能を促進させて症状を軽減する運動・理学療法と、痛みをとる薬物療法が併用して行われる。また、患者に対する病態説明や療養指導を行い、病気への理解を深めることも大切になる」とのこと。
「薬物療法では、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が痛み止めの第1選択として使われる。また、一部の末梢関節主体のケースでは、サラゾスルファピリジンや副腎皮質ステロイドの局所注射が有用な場合がある。
さらに、2010年には、新たにTNF阻害薬(生物学的製剤)が痛みや炎症に対して高い効果を示すことから日本でも保険適応となり、治療選択の幅が広がった」と、多田先生は、TNF阻害薬の保険適用で薬物療法の有用性が著しく高まったと力説していた。
「とくにTNF阻害薬は、若年者で、機能障害が進行していない状態で、炎症反応が上昇している患者ほど高い有効性が期待できることがわかってる。
そのため、強直性脊椎炎では、早期診断による早期のTNF阻害薬の投与が非常に重要になってきている」と、早期診断・早期治療の重要性を訴える。「すでに、海外では、早期の強直性脊椎炎患者に対して積極的にTNF阻害薬による治療介入が行われ、高い有効性を示している。
しかし、日本では、レントゲン変化が見られている強直性脊椎炎にのみ適応になっているため、TNF阻害薬の早期投与が難しいのが実状である」と、海外と日本では強直性脊椎炎の治療に大きな差が出てきていると指摘していた。