有害化学物質の中でBPAは医療費コストを押し上げている | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

・Huff Post Green 2014年1月25日
有害化学物質の中でBPAは医療費コストを押し上げていると専門家は言う

情報源:Huff Post Green January 25, 2014,
BPA Among Toxic Chemicals Driving Up Health Care Costs, Experts Say
By Lynne Peeples
http://www.huffingtonpost.com/2014/01/22/bpa-health-care-costs_n_4644372.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年1月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/140122_HuffPost_BPA_Health_Care_Costs.html

 アメリカにおける医療費支出は1960年代以来8倍以上に上昇している。

同時期に急上昇しているものは:慢性疾病の発症率、合成化学物質の使用、そして広く使用されているこれらの物質の多くが人の健康を破壊しているかもしれないという証拠-である。

 ”我々はこれらの化学物質が人々に及んでいることを知っている。

我々は化学物質は病気の原因となることを知っている”とニューヨークのマウント・サイナイ医科大学予防医学部議長フィリップ・ランドリガン博士は述べた。

 ”これらの疾病はお金がかかる”とランドリガンは付け加えた。

 水曜日(1月22日)に発表された新たな研究が、医療の議論で広く見過ごされていたこの財政負担のひとつの例を提供している。

その研究によれば、食品及び飲料の容器に使用されるビスフェノールA(BPA)は、幼児期の肥満と成人の心臓疾患に関連するコストとして年間推定30億ドル(約3,000億円)をもたらしている。

 ”ある人は、それはばかげたほどに控え目であると主張するかもしれない”とニューヨーク大学ランゴーン医療センター小児科環境医療健康政策准教授でこの研究の著者であるレオナルド・トラサンデは述べた。

 トラサンデの計算は、前立腺がんや乳がん、ぜんそく、偏頭痛、生殖系障害、行動障害のような、他の研究がBPAに関連付け始めている健康問題を考慮に入れなかった。

トラサンデは、彼がこの化学物質への暴露の安全レベルを控え目に考慮したと付け加えた。科学者らはたとえ微小な量でも著しいダメージを及ぼすかもしれないと警告していた。

 それでもトラサンデは、”科学には不確実性がある”ことを認めた。

 化学産業界はこの点を強調し続けている。米食品医薬品局もつい昨年6月に BPAに関する Q&A で、”BPAは安全か?”という質問に一言で”はい”と回答した。アメリカ化学会のポリカーボネート/BPA世界グループのスティーブ・ヘントゲスは、HuffPost にeメールで声明を伝えてきた。

 ヘントゲスは、トラサンデの研究は、”包装食品の安全性と完全性から高性能のスポーツ機器や自動車部品にいたるまで、広範囲にBPAがもたらす著しい経済的及び公衆衛生の便益を軽視している”と批判した。

 BPAは、子どものシッピイ・カップや哺乳ビンでの使用がFDAにより禁止されているが、食品缶詰の内面ライニングを含んで多くの製品中で使用されている。トラサンデは、彼の研究はFDAがそのような用途でのBPAの禁止を拒否した

ことについての懸念を提起していると示唆した。

 トラサンデはひとつの代替案として含油樹脂(oleoresin)を指摘した。この油と樹脂の混合物をアルミ缶の内面ライニングに使用するとひと缶当たりBPAより約2.2セント高くつくであろう。

年間、1,000億のアルミ缶が製造されるとすると、年に22億ドルとかなりの追加コストになり、さらに市場に出す前のテストのような追加コストもかかる。

 それでも、トラサンデは、”BPAをやめることの便益は、可能性ある安全な代替のコストに勝ると述べた。

 約93%のアメリカ人が体内にもつBPAは、アメリカ人の疾病率を上昇させていることが疑われている増大する化学物質のひとつであるに過ぎない。現在8万種以上の化学物質が市場に出ている。

その健康影響について完全にテストされているのは、これらのうち少数だけである。

 今日の健康懸念のわずかな一部だけがトラサンデによる2011年の研究に含まれていたが、その中で彼は、有害化学物質と大気汚染に帰することができる子どもの医療コスト、失われる作業時間、及び知能指数の低減に766億ドル(約7兆6,600億円)を勘定した。

彼の新たな研究で見出した例えば小児期の肥満コスト 14億9,000ドル(1,490億円)は、この合計に加えることができたはずである。

 ”ほとんどのアメリカ人は政府が彼らを保護しおり、化学物質はリップスティクや食品容器になる前にテストされていると信じている。

しかし真実は全く反対である。それらはほとんど又は全く検査されずに市場に出される”とランドリガンは、1976年の有害物質規制法(TSCA)を挙げつつ述べた。

 カリフォルニアにおける最近の二つの動きが、市場から撤去することがいかに難しく、時間がかかるかを示していると彼は付け加えた。

 1月の初めに、カリフォルニア高等裁判所は、鉛含有塗料の元製造3事業者に、数百万戸の鉛含有塗料を交換するために11億5,000万ドル(約1,150億円)を支払わせる判決を下した。

アメリカ政府は、科学的研究が低レベルの鉛含有塗料がIQの低下や学習障害から社会病質人格障害行動まで様々なことに関連していることを示して以来、ほとんど一世紀後の1978年に住宅用の鉛含有塗料の使用を禁止した。

 また今月、カリフォルニア州は、神経系及び生殖系障害、及び発がん性の証拠が増大している難燃剤を布/皮張り家具の詰め物に含めるべきとする数十年も古い要求を取り下げた。(ある難燃剤メーカーは、この新たな法律を提訴した。)

 それでもランドリガンは遅い行動でも、何もしないよりはよいと述べた。

 ”有害化学物質を規制するための以前の取り組で、膨大なコスト節減をもたらしたものがある”と、ランドリガン博士及び彼の同僚でありジョージ・ワシントン大学公衆衛生学部長のリン・ゴールドマン博士は、今月発表された化学物質の安全と健康管理コストに関する論文の中で書いた。

 彼らはEPAによるガソリンから鉛の排除の例を挙げたが、それは1980年以来、推定3兆ドル(約300兆円)のコスト削減をもたらした。この重金属は主にが鉛含有塗料中に残存しているという理由で、いまだにアメリカでは厄介者ではあるが、ガソリンからの鉛の排除により数百万の子どもたちが脳、腎臓、心臓血管系への名うての悪影響を回避することができた。

 化学物質暴露に関連する値段は、重要に見えるかもしれないが、それらは医療コストについての熱い美辞麗句の中にほとんど見当たらず、これらやその他の要素がアメリカ人に高価な医療を求めさせたと専門家は言う。

 ”もし現状の健康の傾向が続くなら、慢性疾患の蔓延とそれらの治療費の増大のために新たな医療法(health care laws)があろうとなかろうと、一世代以内に我々は医療システム(health care system)を破綻させてしまうであろう”と非営利団体ヘルスケア・ウイズアウト・ハームの代表ギャリー・コーヘンは最近の Huff Post のブログに書いた。

 アメリカでは医療に費やされる1ドルのうち病気の抑制に向けられるのはわずか4セントだけであると言及しつつ、”予防は治療よりもはるかにコスト効果がある”とコーヘンは書いている。

 ランドリガンも同様な主張を有害化学物質規制に向けた。

 ”鉛含有塗料又は難燃剤が市場に出た後ではなく、出る前にそれらの危険性を認める方がコスト効果がある”と彼は述べた。

 現在、”BPAを使用しない(BPA-free)”製品中で広く使用されているビスフェノールSは、”有罪が証明されるまで無罪”であるとする政府の規制戦略によって潜在的な問題を有している。

BPSは化学的にはBPAと同様な構造であり、それはBPAと同じ位、もしかするとそれ以上危険な特性を持っているかもしれない。

 言い換えれば、BPS は BPA と同じように多くのアメリカ人を医者の下に、薬局に、そして緊急処置室に送ることになるかもしれない。

 ランドリガンは、長らく待ち望まれている有害物質規制法(TSCA)の修正案が議会を通過すればよいとする希望を述べた。

超党派による2013年安全化学物質法(訳注1)は現在、議会に上げられている。一方、大統領バラック・オバマの議論ある医療制度改革法(訳注2)の出現は、有害化学物質に対処するための緊急性をもたらすものであると彼は述べた。

 低価格の医療保険法(Affordable Care Act)の中心となる要素の中に予防に動機を与えるための措置がある。

 ”過去においては、医師と医療制度はダメージを修復するために金が支払われた”とランドリガンは述べた”。”これからは人々の健康を維持するために支払われるであろう”。


訳注1:2013年TSCA 改革法案
TSCA 改革法案の現実性をチェック リチャード・デニソン(EDF 上席科学者)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/ed/130605_edf_reality_check_TSCA_reform.html
訳注2:オバマ政権の医療改革
講演会資料 オバマ政権の医療改革とわが国への示唆(岡部陽一)
http://www.y-okabe.org/pdf/100514_jp.pdf