第3章 化学物質に過敏に反応する児童生徒への配慮
化学物質に過敏に反応する児童生徒への配慮について,保護者等から寄せられる要望の中には,様々なものがあるが,対応が困難なものもあることから,教育委員会や学校として,現在できることや,できないことについては,保護者等の理解を得ることが必要である。
なお,当該児童生徒に対する学校の対応が,他の児童生徒や保護者に理解されず,差別や偏見を受けることのないよう,情報提供や説明に努めるなど十分配慮する必要がある。
1 化学物質に起因する健康問題が疑われる事例への対応
学校において,化学物質に起因する健康問題の発生が疑われる訴えや相談等があった場合は,原因を調査するとともに,学校医,学校薬剤師の指導助言のもと適切な対応をとったうえで,当該児童生徒には医療機関の受診を勧める。
そして,必要に応じて教室等の環境衛生検査を行う。
また,別紙「化学物質過敏症等児童生徒の健康管理カード」を活用し,体調不良の内容や体調不良が起きた原因などを把握したうえで,事後の対応を協議する。
2 化学物質に過敏に反応する児童生徒の入学(転入)時の対応化学物質過敏症等の児童生徒が入学,転入することになった場合は,保護者や主治医等から学校において配慮すべき事項等をできるだけ文書で確認するようにし,別紙「化学物質過敏症等児童生徒の健康管理カード」を作成した上で,当該児童生徒等が通常の学校生活を送れるよう,教職員,学校医,学校薬剤師等が連携して対応する。
〈協議・確認事項の例>
・ 過敏に反応する物質(具体的に)
・ 授業で使えない教材(具体的に)
・ 受けられない授業(単元)の有無と対応方法
・ 既往症の有無
・ アナフィラキシー(※1)の有無及び学校内で化学物質に反応し呼吸困難,血圧低下など緊急を要する症状が出た場合の応急対応方法
・ 学校内で当該児童生徒等に化学物質に起因すると疑われる健康被害が発生した時の対応方法
・ 保護者(本人)の要望
・ その他参考事項(過敏に反応する物質は個人差があるので,反応しない代替品があるか否か)
・ 初発の時期
・ 初発のきっかけ
・ 家族歴(化学物質に過敏体質な家族がいるか否か)
化学物質に過敏に反応する児童生徒が在籍する学校においては,保護者及び主治医等から配慮すべき事項等について,できるだけ診断書や文書等で確認し,本章1,2と同様に保護者等と連絡を緊密にとりながら当該児童が可能な限り学校生活を送れるよう,学校として対応可能な配慮をする。
また,別紙「化学物質過敏症等児童生徒の健康管理カード」を活用し,全教職員が共通認識をもった上で適切な対応をとれるようにする。
※1 ―メモ― 【アナフィラキシーとは】
アナフィラキシーとは,ハチ毒や食物,薬物等が原因で起こる,急性アレルギー反応のひとつである。アナフィラキシーは,じんましんや紅潮(皮膚が赤くなること)等の皮膚症状や,ときに呼吸困難,めまい,意識障害等の症状を伴うことがあり,血圧低下等の血液循環の異常が急激にあらわれるとショック症状を引き起こし,生命をおびやかすような危険な状態に陥ってしまうことがある。
これをアナフィラキシーショックと呼ぶ。