・出典:TMG保険新報
・http://www.tmg.gr.jp/hokensinpou/0202-1.html
病気と健康自己免疫疾患を接点に
田園調布中央病院 内科部長 星 真哉
「病気」は、現代の社会生活を営む個人における最大のリスクのひとつといえます。
2000年問題は、全てがゼロになってしまうことのリスクでした。
それはあらゆる20世紀の膿(ウミ)や灰汁(アク)が医療の世界に現れることになった年でした。
2001年は、21世紀を迎え人類、世界そして日本の社会が新たな世紀にお
けるファーストステップとして、システムの不備の問題を改善・構造改革するべく転換期として模索しはじめた年であったと思われます。
20世紀前半までは「病気」というと「病」に「気」がついて、自覚症状があっ
てはじめて医者のところへかけつけるというものでした。
20世紀後半、医学の進歩の中で「健康」の中身、恒常性・ホメオスタシスという正常の状態の仕組みがわかってきて「心臓病」「肝臓病」などという用語も病気の分類上、更に細かく枝分かれしていきました。
結核のような感染症やがんは、早期発見・早期治療や予防としての取り組みにより進歩めざましいものがあったと言えます。
これらは比較的「悪」と「善」がはっきりしているため「悪」をたたく対策、予防ともに行政的にも着実に進められてきました。
一方で「アレルギー」という免疫学の進歩から新たな病気の概念が生まれてきました。
これは「善」であるはずの免疫の反応が敏感にからだに影響を及ぼしてしまうことにあります。
今回は自己免疫性疾患という疾患概念、「リウマチ」が意味することなど、疾患対策について解説していただきたいと思います。
Q 自己免疫性疾患とはなんでしょうか。
A 人の正常な免疫システムには「自己」と「非自己」を区別できる仕組みが備わっています。
「アレルギー」は、抗原という免疫の反応を引き起こすもの、例えばアトピー性皮膚炎におけるダニ抗原による反応がよく知られているところですが、過敏な免疫の反応を起こしてきた結果、「炎症」という形で様々な症状を呈してくることになります。
自己免疫疾患はダニのような「非自己」ではない、脳神経、甲状腺、腎臓や、胃、肺、皮膚、関節など「自己」の内臓組織や細胞を構成する核、細胞質などの成分に対して過敏な免疫の反応として呈してくるアレルギーで、炎症症状をきたす疾患です、
全身性に影響が及んでしまう全身性自己免疫疾患と、ある臓器だけが影響を受けてしまう臓器特異的疾患に分類されます。
A 臓器特異的自己免疫性疾患の代表的なものに甲状腺のバセドウ病、橋本病。
膵臓の若年性1型糖尿病。肝臓の自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などがあります。
B 全身性自己免疫性疾患には、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群など膠原病と言われているものがあります。
Q 膠原病とリウマチはどうちがうのでしょうか
A 膠原病は結合組織病とも言われ、顕微鏡によって病態の特徴が、血管周囲の膠原繊維、結合組織に炎症性の独特の所見が認められたことから用いられるようになった用語です。
全身性自己免疫性疾患で膠原病、結合組織病と言われるものは同時に多発性に関節痛も生じるためリウマチ性疾患としても位置づけられます。