・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
ニュースレター86
・厚労省が「急性参照用量」の導入決定
どうなるクロチアニジン残留基準
事務局 植田 武智
85号ニュースで紹介した、ネオニコチノイド系農薬の一つであるクロチアニジンの残留基準見直し問題で動きがあった。
ほうれん草への40ppmという基準値案ついては、海外で導入されている急性中毒の許容量である「急性参照用量(ARfD)」と比べると、子どもではたった40g食べるだけで超過してしまうという、つまり急性中毒のリスクが出てくる残留基準案である
。2月3日に国民会議をはじめとした諸団体で厚生労働省に基準値案撤回の交渉に行ったことは、前回のニュースで報告したとおりだ。
その後、厚労省は3月18日の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会」で、この急性参照用量の導入を正式決定した。
今後新たに評価される農薬については、この急性参照用量の設定が必須となる。またクロチアニジンの残留基準値案についても再検討することを決定した。食品安全委員会に差し戻しになり、この急性参照用量の設定や、未検討の発達神経毒性試験データなどの評価が行われる予定だ。
クロチアニジンの問題に入る前に、この急性参照用量について少し説明させていただきたい。
野菜や果物が原因での農薬中毒事件が過去に起きており、世界的にはすでに1990年代から、急性ばく露の安全レベルとしてARfDを農薬ごとに設定し、慢性ばく露の安全レベルである一日摂取許容量(ADI)とともに残留基準値の設定に活用している。
この急性参照用量の導入で、農薬の残留基準値はどう変わるのだろうか?
慢性ばく露の影響を考慮したADIの場合、それぞれの食品毎に農薬の残留量とその食品の1日当たりの平均摂取量を掛け合わせた量を積み上げていき、その総量がADIを超えなければOKという仕組みだ。
この「1日当たりの平均摂取量」というのが者で、たとえばほうれん草の場合はたった18.7g(1株弱)と、とても少ない量だ。
しかし、ほうれん草好きな人は食べる量が違う。
一度にたくさん食べた場合の危険性は、ADIだけでは見逃されてしまうわけだ。
そこで導入されるのがARfDだ。
ここでは食品の摂取量は平均値ではなく、最大値で評価される。同じ国民食品摂取量調査のデータをもとに、食品ごとに大食いの人が一度にどれくらい食べるかの値を調べた。
ほうれん草では178.5g(一束弱)で、平均値とは10倍くらいの違いがある。
急性参照用量は、同じ農薬でも食品毎の最大摂取量と農薬残留量を掛け合わせて、その値が急性参照用量を超えていないか判断する。
超えていた場合には、その作物への残留基準値を下げる要がある。
クロチアニジンの残留基準値案をADIとARfDを使って評価してみたのが上の図だ。
左の図は、1~6歳の子どものケースでのADIで判断したグラフだ。
ほうれん草に40ppmという基準値が設定された場合、摂取量全体に占めるほうれん草の割合は40%も占めることになる。
ただそれでも、ADIと比較すると73%にしか過ぎないためOKとなる。
右の図は、同じ1~6歳の子どものケースで、ARfDで判断したグラフだ。EUのARfD100μg/体重㎏と比べると、ほうれん草では6.2倍超過。
それ以外にも、春菊、みつば、こまつな、チンゲンサイ、ブドウ、レタス、セロリなどでも超えることになる。
では、今後の再評価でクロチアニジンの残留基準値は低くなるかというと、事態はまだ流動的だ。
というのも、クロチアニジンのARfDの値はEU以外にも国際機関であるFAO/WHO合同農薬専門家会議(JMPR)が定めた値もあり、そちらはEUより6倍甘い。
同じデータを評価しているのになぜ6倍もの差が出るのかは不思議なのだが、そちらで評価すると、ほうん草の40ppmでも、ぎりぎりOKになる可能性もある。
食品安全委員会がどう評価するか、要監視だ。
runより:1つづつなら何とか大丈夫でも多くの野菜を食べると害が出ると思うのですが・・・。
ベジタリアンほど不調になるという国は変だと思う。