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紙面特集記事
原因不明、治療法なし 寝たきりの例も 慢性疲労症候群、実態を調査 (2014/10/15)
患者に調査への協力を求めるチラシ(右)と、患者団体の呼びかけ文
突然、日常生活が難しくなるほどの強い倦怠(けんたい)感や疲労感に襲われ、その状態が続いたり繰り返したりする慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)《筋痛性脳脊髄炎(きんつうせいのうせきずいえん)》。
原因不明で有効な治療法がなく、患者の実態も明らかになっていない。
厚生労働省は本年度、患者の日常生活がどれくらい困難なのかを調べる実態調査を始めた。調査に協力する患者を募っている。
《編集委員 岩本進(いわもとすすむ)》
調査班 協力患者を募集、支援拡大へ
慢性疲労症候群は、倦怠感や疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感、思考力や集中力の低下など多様な症状が長く続く。
重症だと寝たきりの状態になる。
国内の患者は推定で30万人。難病の医療費助成の対象外だ。
調査は、厚労省から委託された聖マリアンナ医科大難病治療研究センター(川崎市)の遊道和雄(ゆうどうかずお)教授らが9月から始めた。
対象は、医療機関で「慢性疲労症候群」と診断された人。調査票に記入し郵送してもらう。
調査内容は、自力で病院を受診できるか、食事をどのようにとっているか、排便や排尿に介助が必要か―など。
発症の経緯、現在の症状や受診先、就学や就労の状況も尋ねる。調査票に記入困難な人は、電話での聞き取り調査にも応じる。
年内にも調査票の回収を終え、来年3月までに報告書をまとめる。
支援やサービスの必要度を明らかにするほか、診断基準や治療指針の確立に役立てていく。
患者団体のNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(東京)の篠原三恵子(しのはらみえこ)理事長は「困っている実態を訴え、国を動かし、一日も早く福祉サービスを受けられるようにしたい」、遊道教授も「社会の理解と支援を広げる大切な調査」と患者に調査への協力を呼びかけている。
協力希望者は、氏名、住所、電話番号、メールアドレスを、調査班の遊道教授まで(電)044・977・8111内線4029かメールyudo@marianna-u.ac.jp で連絡する。
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旭川の重症患者 「まるで泥沼のほふく前進」
旭川市の臼井由紀(うすいゆき)さん(36)は、重い慢性疲労症候群で、一日中ほぼ横になる寝たきりの生活だ。
「起きるのは食事の時とトイレくらい」。
週1回の入浴や月1回の通院の後は決まって数日間は寝込んでしまう。
「だるいというか、こわいというか、『疲労』とは違う感じ。
とにかく寝そべりたい」「まるで泥沼のほふく前進か、重油まみれの水鳥みたい」とたとえる。
腕に力が入らず箸が持てない時もある。
考えながら話をするだけでも疲れる。「何を行うにもエネルギーが必要。行うと、疲れて寝込む。この繰り返しです」
慢性疲労症候群と診断されたのは昨年6月。臼井さんは13年前に体験した体の痛みと高熱が発病のきっかけと考えている。
熱は下がったが痛みは2年続いた。
その後仕事に就いたが、力が入らない、動けない、記憶の障害など症状が悪化するたびに退職と転職を繰り返した。昨年寝たきりとなり、仕事を辞めた。
この間、内科、脳神経外科、神経内科、整形外科、精神科など大病院を何度も受診したが原因は分からなかった。
「道内に診断できる医師がほとんどいない。診断されぬまま寝込んでいる人もいるのではないか」
今、10種類の薬を飲んでいる。さまざまな症状を和らげる薬だ。
「せめて身の回りのことは自分でできるようになりたい」と願う。
相談した役所の福祉担当者から「支援できることは何もない」と言われたことがある。
「動けるのならば働きたい。
でも、今は支援や家族の介助がないと生きるすべがないのです」
臼井さんも実態調査に協力する。「この病気への理解と支援が広がり、道内に早期診断できるような拠点病院がほしい」と訴えた。
道内の実態把握されず
道内で慢性疲労症候群を診療している医師の話 道内に患者がどのくらいいて、誰が診ているか、全く把握されていないでしょう。
診断や診療している医師はほとんどいないのではないか。
だが患者の中には、慢性疲労症候群で調子が悪くて動けないのに、周囲に信じてもらえず、「怠け者」とか「仮病」と言われ、苦しんでいる人がいます。