8.毒性等価係数(TEF)と毒性等量(TEQ)
①毒性等価係数(TEF: Toxic Equivalency Factor):
ダイオキシンの個々の同族体の毒性の強さを、
最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDを1として表した係数。
② 毒性等量(TEQ: Toxic Equivalent):
多数の同族体の混合物として存在するダイオキシンの毒性の強さを、
各同族体の量にそれぞれのTEFを乗じた値を総和して表した値。
③現時点では、1997年のWHOの最新のTEFを用いることが適当と思われる。
現在、毒性があるものとしてTEFが与えられているのは、 PCDDが7種、PCDFが10種、コプラナーPCBが12種。
9.TDIの算定
①基本的な考え方(WHOが採用したものと同じ)
ア.ダイオキシンの毒性が、直接的な遺伝子傷害性が無いとの判断から、
TDIの算出には、無毒性量(NOAEL)あるいは最小毒性量(LOAEL)に、
不確実係数を適用する方法を用いる。
イ.ダイオキシンのように蓄積性が高く、かつその程度に大きな種差がみられる物質については、影響との関連をみるためには、一日あたりの摂取量よりも、体内負荷量(body burden)に着目する方が適当である。
ウ.各種毒性試験において評価指標とした反応の毒性学的意義、用量依存性、試験の信頼性、試験の再現性等を考慮の上、最低レベルの体内負荷量で毒性反応が認められた試験を、TDI算定の対象とする。
エ.動物実アの結果から人におけるTDIを算定する際には、不確実性をもった様々な要因が算定値に大きな影響を及ぼすので、不確実係数を設定。
②各種毒性試験における体内負荷量
③ヒトの一日摂取量の算定方法
ヒトが生涯暴露により、この体内負荷量に達するために必要な一日摂取量を、WHOと同じ計算式で求める。
④不確実係数の決定
様々な要因を考慮し、WHOと同じく10とした。
⑤TDIの決定
各種試験の結果を総合的に判断し、 概ね86ng/kg前後をTDIの算定根拠とする体内負荷量とする。
WHO専門家会合も、TDIを1~4pg/kg/日としつつ、 当面、現在の先進諸国の暴露量が耐容しうるものと考えられることから、 4pg/kg/日を最大の耐容摂取量とし、 究極的には1pg/kg/日未満に低減していくことを目標としており、 我が国でも、当面、現在の暴露状況は耐容しうる範囲のものと考えられる。
以上から、当面の間のダイオキシンのTDIは、 86ng/kgの体内負荷量から、ヒトの一日摂取量を求め、 不確実係数の10を適用し、4pgTEQ/kg/日とすることが適当。
なお、いくつかの動物実験において、 体内負荷量86ng/kg以下のレベルでも微細な影響が認められており、 今後とも調査研究を推進。
10.おわりに
(1)TDIの意義と留意点
①TDIは、
生涯にわたって摂取し続けた場合の健康影響を指標とした値であること。
→従って、一時的に多少超過しても健康を損なうものではない。
②今回のTDIは、
最も感受性が高い胎児期の暴露の影響を指標としたこと。
→従って、人の集団全体に対する評価としては、より安全サイドに立っている。
ちなみに、発がん性等は、より高用量の暴露で起きるもの。
③不確実係数を適用した数字であること。
→感受性の差など個人差等も織り込んだものとなっている。
④ダイオキシンの暴露は大部分が食事によるものだが、
それぞれの食品の持つ栄養素の重要性等も考慮し、
バランスの取れた食生活が重要。
母乳から乳児が取り込むダイオキシンの影響については、なお研究が必要だが、母乳哺育の有益な影響から母乳栄養は推進されるべきとされる。
⑤母乳中のダイオキシン濃度が
過去20年程度の間に半分以下に低下していることからわかるように、我が国のダイオキシン暴露量は低減してきたと考えられる。
さらに、政府では、今後4年以内にダイオキシンの総排出量を9割削減することとしており、環境中のダイオキシン濃度は今後一層低下が期待できるかも。
(2)今後の対策
①ダイオキシン対策の推進
我が国の現在の暴露状況は、 今回のTDIと比べて十分に低いと言えないことから、 環境への排出を削減することが必要。
ダイオキシンは生物にとって有害で無益なものであるから、 将来的には、摂取量をできる限り少なくしていくことが望ましい。
あらゆる関係者が、排出削減に向けた取り組みを推進することが重要。
②今後の調査研究の必要性
今回のTDIは、既存の科学的知見を基に算出された当面のもの。
ダイオキシンの人体影響については、 未解明な部分が多く、各種の調査研究の推進が重要。
今後の調査研究の進展や、 WHOの再検討の状況を踏まえながら、 検討していくことが適当。
runより:本文でも述べられてましたが生活排水には苦しめられています。
洗剤、柔軟剤、漂白剤が側溝から漂ってくるので近所を歩くのでさえ苦痛ですね。