有害化学物質の現状を藤森敬三氏に聞く(2-1) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・有害化学物質の現状を藤森敬三氏に聞く(2)

 今回は昨年9月に行われた「欧州環境ホルモン実態調査ツアー」の模様をお届けしよう。同ツアーを企画され、団長として欧州各国をまわられたのが日本電気環境エンジニアリング株式会社顧問の藤森敬三氏である。

それでは藤森氏にこのツアーの目的からお話いただこう。

<ツアーの目的>
 欧米諸国の行政は日本と違い、相当以前から内分泌撹乱現象に気づいて研究を重ねている。数多くのデータや論文も発表されている。

その第一次集大成が“奪われし未来”“メス化する自然”などを出版させた。しかし日本ではまだまだ十分な対応がとれているとは言えない。

一刻も早く欧米諸国の活動を調査し、学ばなければならない。そのために、欧州諸国における社会風土、問題意識の醸成、思考過程を実際に現地へ行って五感を使って学びとる必要があると考えたためこのツアーを企画した。
 ツアーに参加したのは、国内の化学・環境・薬品・食品など化学物質を身近に扱っている企業・機関の経営者・役員・研究者など総勢10名。


<ツアーの訪問先>
 今回のツアーでの主な訪問先は以下の施設・機関である。


1.デンマーク コペンハーゲン大学 大学病院
 男性(ヒト)の生殖医学について永年研究を続けている。
 研究成果として状況は悪化していると報告。
2.デンマーク デンマークEPA(環境庁)
 環境ホルモンについて積極的に研究を進めている。

この分野における世界のリーダー。
 有害化学物質の削減に積極的。
3.スウェーデン 化学物質管理機関
 有害化学物質管理で世界一早い対応をとっている。
4.スウェーデン SAKAB(有害化学物質処理工場)
 スウェーデン最大の廃棄物処理業者。

有害化学物質の専門処理工場として世界に先駆けた企業。
5.ノルウェー NIVA(水質研究所)
 北海に面した国として、海洋の汚染状況の調査研究が盛んに行われている。
 環境ホルモンについても魚介類を使って積極的に研究。
6.イギリス ZENECA(環境研究所)
 海洋や河川の汚染と環境ホルモン問題で世界の先陣を行く。
 既存・新規の化学製品のリスクアセスメントを行う。
7.イギリス DETR(環境・交通・地方局)
 環境ホルモン問題では豊富な実績を持ち、産業界に対しても一早い対応をとっている。
8.イギリス MAFF(農業・漁業・食糧省)
 食品安全の立場から環境庁と連携して、魚への影響を研究している。

<デンマーク>
 デンマークの環境ホルモン研究は早くから進められ、数々のデータをもち、新たな研究プロジェクトでも世界をリードしている。

特に、環境ホルモンのヒトの生殖機能への影響についてはデンマークでしか話をきけなかった。

これにはコペンハーゲン大学のスカケベック教授の存在が大きな影響を与えている。
 スカケベック教授は男性の生殖機能障害に焦点を当てて研究している環境ホルモンの世界的権威である。

教授は、
(1)精子数に減少傾向がみられる、
(2)精子の運動性や形状に悪化傾向が見られる、
(3)精巣ガン発生率が年々増加している、
(4)精巣ガンの発症年齢が20代~30代に多い、
といった現象が短期間のうちに起きていることから、人間(男性)への影響が(遺伝的な変化ではなく)環境ホルモンの影響として存在するのではないかと推測している。
しかし、現況ではあくまで推測の域を出ていない。

この問題は過剰反応や短絡的な化学物質否定ではなく、慎重に対応することが重要である。

今後も研究を進めていく必要があるため、資金面での産業界の協力が必要であることを訴えていた。

資金不足はどこの研究機関でも悩みの種のようだ。

特に日本との共同研究を強く望んでいた。

 デンマークEPA(環境庁)ではスカケベック教授と連携をとり、さらに野生生物も対象にした環境ホルモン研究が行われている。
現在、種々の研究プロジェクトが進められており、
北欧、EU、OECD(Organization for Economic Co-operation and Development、
経済協力開発機構、加盟国は日本を含む29カ国。)メンバー国などと協調して進められている。

 現在までの研究成果は数々の出版物にされている。

それらは誰でも入手でき、その多さにも驚かされる。

今回のツアーでは「望ましくない化学物質」リスト(100品種)1998年版も入手した。

非常に優れたリストで関連部署の方は必見である。

このリスト作成の根底には“疑わしき物質への早期処理”の原則がある。

そのため環境ホルモンの観点を考慮した完全なデータに基づいて選ばれたわけではない。

データが揃うまで待っているわけにはいかないという考え方である。

このリストは現在までに明らかになっている毒性データや市場での使用量を考慮している。

つまり、リスクの観点からアセスを行い、事故を未然に予防しようとする意図から作成されているのだ。

環境ホルモンの観点からの評価は現時点では不十分なので、今後この側面からの評価を追加していくことになる。

デンマークの「望ましくない化学物質」の規制・廃止の活動は国内にとどまらせず、北欧、EU、そして全世界へと発展させたいという。