日弁連:電磁波問題に関する意見書7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(5) 予防原則の観点からのセンシティブエリアの設定
① 予防原則について
前述の欧州議会や欧州評議会で指摘された予防原則とは,人の生命・健康や自然環境に対して大きな悪影響を及ぼす可能性が懸念されている物質や活動について,たとえその悪影響に対する科学的な解明が不十分であっても,すべての関係者は十分な防護対策を実施すべきであるという考え方である。
この点,当連合会も,2003年10月の人権擁護大会において採択された
「新たな化学物質政策の策定を求める決議」の中でも,予防原則を含んだ立法の提言を行っているところである。
欧州議会の決議等では,加盟国の民意として,複数の研究報告があり科学的に必ずしも明確ではない電磁波の分野において,より安全や健康に配慮する形で価値判断するという傾向があるように見て取ることができる。
② 予防原則の観点からの安全対策
予防原則に基づく規制は,要するに科学的に不明確な点に関する合意形成の問題,すなわち,科学的に必ずしもよくわからない点についてどのように取り扱うことに決めるのかという問題であると思われる。

したがって,電磁
波に関する情報の公開と被害実態の調査は,議論の大前提とされるべきである。
その上で,可能な限り市民参加を制度化して議論が進められるべきであり,またこれと並行して,暫定的であったとしても,子どもや妊婦などの弱者への予防的対応や,できるところからの予防的な対策とそのための支援策が講じられて良いように思われる。

必ずしも現時点において科学的因果関係が明確でなくても,情報の公開と実態調査を求め,予防的により強い規制を検討するという価値判断は,十分にあり得ることではないかと思われる。

前記した欧州での議論の内容を踏まえればなおのことである。
特に,電磁波は,急激な科学技術の進歩とともに,生活環境の中における
強度が増大しており,その健康影響に関する研究が増大の速度に追いついていないため,特に予防原則の観点からの安全対策が重要となる。

18 合理的に達成できる限り低く保たなければならないとすること。(ALARA:As Low As ReasonablyAchievable)

③ センシティブエリアの設定
前述の国立がん研究センターによる子どもに対する携帯電話の使用に対する警告や,欧州議会,欧州評議会の決議で子どもに対してより強い保護を求めていることに見られるとおり,子どもや妊婦,病人など電磁波の影響をより受けやすいと考えられる人たちに対しては,予防的措置の観点から,より厳格な規制を検討するべきである。
この点,前述のとおり,イタリアではセンシティブエリアを設定して厳格な注意値を定めているところである。
(6) 小括

以上のとおり,電磁波に関しては,その健康影響を懸念するに十分な研究結果が存在し,欧州では,ICNIRPガイドラインよりも厳しい規制を行う方
向へと進んでいる。
その現状と予防原則の重要性をあわせ考慮すれば,健康影響が懸念される子ども,病人などについては,暫定的に,より厳格な規制を検討するべきである。
そして,その規制を検討する上では,人の健康及び環境を保全するという観点から,中立,公正な組織を設立する必要がある。
3 電磁波を発生させる施設建設に関する情報開示・手続保障の必要性(「第1 意見の趣旨1(3))
(1) 日本の現状
① 国としての規制がないこと
現在,我が国の法律や規則レベルでは,電磁波を発生させる施設(以下「電磁波施設」という。)を建設する際に,建設予定地周辺の住民に対する情報開示や,周辺住民による建設に対する異議申立ての特別な手続は制定されていない。

あくまで一般の建造物と同様に,建築基準法その他の規制により必要とされる手続が必要なだけである。
そのため周辺住民にとっては,新たに電磁波施設が設置されることや,自
分が住む地域のどこに電磁波施設があるのか,自分の家にはどの程度の強度の電磁波を浴びているのかを知る適切な手段がない。
② 条例等の制定
この点,地方自治体の条例レベルでは,電磁波施設に関し,住民に対する
情報開示・手続保障を要求しているものも存在している。
例えば,鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例では,第4条において事業者が携帯電話等中継基地局を設置する場合には,周辺住民や,学校,児童福祉施設等の管理者の意見聴取などを義務付けている。さらに同条例では,第6条において事業者に工事の計画書を市長に提出すること,第7条で計画書を提出後,周辺住民に工事の概要を説明することを定めている。
このように同条例では,事業者が携帯電話中継基地局を設置する場合に,周辺住民に対する情報開示と,周辺住民が意見を述べる機会を設けることを事業者に義務付けているのである。
他にも福岡県の篠栗町,岩手県の滝沢村等が,条例によって電磁波による
健康被害の不安を指摘した上で,携帯電話中継基地局設置の際の情報開示と手続保障を定めている。
また,条例で定める以外にも,福島県いわき市等のように要綱で情報開示
や手続保障を定めている自治体や,奈良県の斑鳩町のように政府に対し,電波基地局設置に周辺地域住民への説明と合意を義務付けることを求める意見書を提出している自治体も存在している。
このように,我が国では,国レベルでの電磁波施設の情報開示や手続保障
に関する規制はないものの,地方自治体では既に情報開示や手続保障を要求しているところは存在している。
③ リスクコミュニケーションについて
さらに国レベルでも,情報開示・手続保障の重要性は認識されているといえる。