低濃度胎児期メチル水銀曝露と健康影響 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・低濃度胎児期メチル水銀曝露と健康影響
岡山大学大学院環境生命科学研究科 頼藤 貴志


 国内でのメチル水銀中毒と言えば、誰もがその名前を知っている熊本県不知火海沿岸発生の水俣病(1956年に公式発見)と、その後同じような機序で新潟県の阿賀野川沿いに発生した新潟水俣病があります。

誰しもがあの痛々しい水俣病患者さんの姿に胸を痛めたことと思います。亡くなられた原田正純先生は水俣病の特徴として、環境汚染で発生したこと、食物連鎖を通じて起きたこと、胎内汚染により母親の胎内の胎児に影響を与えたことを挙げていらっしゃいます。

特に最後の胎内汚染に関しては、当時の医学では胎盤は胎児を周りの環境から守るものと信じられていましたが、水俣病における多くの胎児性水俣病患者さんの発生は当時の医学の常識を覆す出来事でした。

水俣病での胎児性(水俣病)患者さんの多数の発生を受け、新潟では母親の毛髪水銀濃度が50ppmを超える場合は妊娠規制や堕胎などが行われた為、胎児性の患者さんの発生は一人しか発生していないとされていますが、そのような対策が良かったのかどうか判断するのは難しい所です。
 さて、水俣での胎児性患者さんは、原田先生により66人が発見されていますが、公健法では胎児性患者や後天的な患者として患者さんを分類している訳ではありませんし、公健法自体による認定の不備というのは周知の事実ですので、胎児性の患者さんの本当の数というのはわかりません。

また、公健法により認定を受けた胎児性患者さんというのは胎児期にメチル水銀曝露を受けた方の氷山の一角ですので、水俣を始めとする不知火海沿岸でどれだけの方が胎児期のメチル水銀曝露の影響を受けているのか、またどのような症状を呈されているのかというのははっきりしていません。
 そのように水俣で胎児期メチル水銀曝露の実態が解明されない中、世界では水俣病やその後イラクで起きたメチル水銀中毒の悲惨な実情を受け、多くの研究が胎児期のメチル水銀曝露の健康影響に着目し行われてきました。
特に、放出された水銀が環境中でメチル化されメチル水銀になる機序が解明されてからは、水俣病のような特定の産業からのメチル水銀排泄による曝露とは異なり、魚介類(特に食物連鎖を通してメチル水銀の蓄積した魚介類)摂取を通して一般の住民よりもメチル水銀曝露が多くなる住民での影響が懸念されてきました。

そのような状況の中、行われ始めたのがファロー諸島、セイシェル諸島、ニュージーランドでの胎児期のメチル水銀曝露と小児の発達に関する疫学研究です。