第5 審査会の判断の理由
1 本件の争点について
処分庁は,本件対象文書を作成しておらず,保有していないため,不存
在であるとして不開示とする原処分を行っており,諮問庁も原処分を妥当
としているので,以下,本件対象文書の保有の有無について検討する。
2 本件対象文書の保有の有無について
(1)異議申立人は,異議申立書において,「「業務上の労災補償状況の調
査」の中に,化学物質による疾病があること,又,東京労働局における
異議申立人の審査決定書の中で,療養・休業補償不支給処分取消請求事
件を本省から入手し,敗訴例を参考としているなど,個別労災請求や裁
判件数が多数あるという事実が分かる。国民の命や健康を守るべき厚生
労働省として,開示請求したような統計を取っていないのは,近年,国
策として問題が生ずる。」と主張する。
(2)諮問庁は,法律上,「化学物質過敏症」については,統計を取ること
が義務付けられていないところであり,本件対象文書は保有しておらず,
不開示とした原処分は妥当であると説明する。
(3)そこで,労働保険審査会における化学物質過敏症に関しての労働災害補償給付の再審査請求の状況が分かる資料について,当審査会の事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,「労働保険再審査関係統計表」
と題する公表資料は,厚生労働省労働基準局総務課労働保険審査会室が,労働保険審査会に再審査請求がなされた案件について,その処理状況を公表した資料であるとのことであった。
当審査会において当該統計表を諮問庁から提示を受け,確認したところ,当該統計表には「(第1表)労働保険審査会事件処理状況」,「(第2表)事件種類別請求件数」及び「(第3表)事件種類別裁決件数」が掲載されており,第2表及び第3表の事件種類別の内訳として,労災保険については,「業務上外」,「障害」,「治ゆ認定」,「再発認定」,「労働者資格」,「給付基礎」,「却下決定」,「通勤災害」,「石綿救済法」及び「その他」の欄とそれぞれ10年度分の件数が掲載されており,第3表の区分欄には「裁決」,「取下」及び「合計」があり,更に「裁決」の内訳として「取消」,「棄却」,「却下」及び「小計」の欄があることが認められた。
諮問庁によれば,「(第2表)事件種類別請求件数」及び「(第3表)
事件種類別裁決件数」の「業務上外」に「化学物質過敏症」が含まれる
が,「業務上外」の内訳は集計していないとしており,当審査会事務局
職員をして諮問庁に確認させたところ,諮問庁は,当該統計表の作成に
当たっても,事件種類別の内訳は集計しておらず,また,再審査請求の
受理件数及び裁決の状況等審査業務の処理状況を集計しているものは,
当該統計表以外には作成していないとのことであった。
(4)上記(1)ないし(3)を踏まえれば,本件対象文書を作成していな
い旨の諮問庁の説明に,特段不自然,不合理な点はなく,これを覆すに
足る事情も認められない。
3 異議申立人の主張について
異議申立人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を
左右するものではない。
4 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,これを保有していないとして不
開示とした決定については,厚生労働省において本件対象文書を保有して
いるとは認められず,妥当であると判断した。
(第3部会)
委員 名取はにわ,委員 大久保規子, 委員 小林克已
runより:何だコレ・・・初めはこんなに酷かったんだ。
「項目にねーから認めん!」という姿勢がいかにもお役所です。
平成25年の諮問を見ると少しづつ進展してる様ですが患者の経済状況はかなり苦しいという現実を見てほしい。