・欧州委員会の戦略
欧州委員会は、既存の三つの規則を更新することにより、化学物質を規制することを計画している。
次の二つの議論がこの取り組みにとって重要である。
第一に、欧州委員会は、これらの化学物質がある閾値以下の濃度で安全であるかどうかを決定しようと試みている。
もし安全であるとする閾値を決定することができなければ、産業側は社会経済的な便益が人に及ぼす健康リスクより重みがあるか、又は代替がないということを示さなくてはならない。
さもなければ、それらは産業化学物質を規制する2006年に採択された広範囲に及ぶヨーロッパの規則REACHの下に禁止されるであろう。
第二に、農薬と殺生物剤は、すでに内分泌かく乱物質は市場から排除されなくてはならないということを求める新たな規則の下に規制されている。しかし欧州委員会はさらに、これらのための正確な同定基準を公式化する必要がある。
欧州委員会の最終提案は、今年中になされることが期待される。
しかし現在、欧州委員会は、”影響評価”手順の確立を検討しているが、それは来年末までその決定を延期するらしい。
化学物質、農薬、化粧品、及びプラスチック産業は、どのような規制にも反対して欧州委員会に圧力をかけてきた。
彼らは、内分泌かく乱物質には閾値がかならず存在すると主張し、同定基準の設定における予防的アプローチに異議を唱えている。
ジャーナルの編集者らは欧州委員会に対し、”全てのよく確立され教えられている薬理学と毒性学の原則を事実上完全に無視した”枠組みについて警告した。
彼らは、内分泌かく乱物質に閾値を設定することができ、毒性学者はホルモン系が順応することができる影響と実際の有害影響を区別すべきであると述べた。
しかし他の科学者らは同意しない
発達期のホルモンかく乱は不可逆的な影響を及ぼすとバーグマンと他の科学者らは彼らの反証の中で回答した。
内分泌かく乱物質の閾値の存在は、実験的に実証することができない”と彼らは書いた。
ある科学者らは、動物実験はBPAやその他のホルモンかく乱物質の低用量が発達中の胎児を害することができるが、高容量では影響がないか、異なる影響を示すということを主張している。
”ディエトリッヒらによる論説の最も懸念される側面は、科学を構成することと、政治的・社会的・民主的選択の領域に属することとの境界があいまいであるということである”と41人の科学者らは書いた。
この論説に加えて、欧州委員会委員長の主席科学顧問に対してこの議論に踏み入るよう促すひとつの書簡が当初の論説に署名した何人かを含む71人の科学者らにより署名された。
少なくとも、この71人のうち40人は様々な産業界と結びついている。
農薬産業界の圧力団体である欧州作物保護協会は最近、この手紙を支持した。
Environmental Health 誌の編集長である科学者フィリップ・グランジャンは、ディエトリッヒとその仲間たちに、彼らの論説における利害関係告知告の”落ち度”を訂正するよう促した。
”学界が彼らの情報を利害関係者と共有することは重要である。
しかし、金銭的な利害関係がある場合には、この情報も明らかにすることが重要である”と、南デンマーク大学の教授であり環境医学の議長であり、またハーバード大学公衆衛生校の環境健康の非常勤教授であるグランジャンは、インタビューで述べた。
しかしディエトリッヒは、それは論説であり、どの様な特定の化学物質にも影響を及ぼすようなデータセットではないのだから告知はないと述べた。
彼は、主席科学顧問への書簡の産業側の支持を見当違いであるとして退けた。
”コントロールできないことがある。もしある人が、それは化学産業界であろうと、欧州委員会であろうと、あるいはその他の誰であろうと、やってきて、’それはよい考えだ’と言っても、そのことは必ずしも私が彼らと特別な関係にあるということを意味しない”と、Chemico-Biological Interactions 誌の編集長であり、ドイツのコンスタンツ大学環境毒性研究グループの長であるディエトリッヒは述べた。
ディエトリッヒは、化学物質会社、農薬会社、及び石油会社から資金が出ている欧州化学物質環境毒性学・毒性学センター(ECETOC)の元顧問である。
彼はまた、ダウ社ヨーロッパといくつかの医薬品会社と共同研究を行っている。
産業界との関与が提案されている規制についての意見に影響を与えたかと問われたときに、Toxicology in Vitro 誌の編集者バス・ブラウボアーは、”これは非常にくだらない質問だ”と言った。
University of Utrecht
バス・ブラウボアーは産業界とのつながりは彼の見解に影響を与えていないと彼は言う。