黄砂実態解明調査報告書(平成15~24年度):2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.黄砂と成分濃度
4.1.平成24(2012)年度の成分分析結果
平成24(2012)年度の成分分析のための粉じん採取は、平成24(2012)年4月23~25日と、平成25(2013)年3月19~21日に実施した。

4月23~25日は22地点、3月19~20日は29地点と大きな黄砂が観測されていた。

浮遊粉じん(TSP)濃度は、4月24~25日に長崎と太宰府、3月19~20日に長崎、太宰府、松江で、それぞれ100μg/m3を超えていた。

アルミニウム(Al)と鉄(Fe)は、黄砂が観測された4月24~25日の長崎、3月19~20日の長崎、太宰府で高く、Alの濃度が6μg/m3を超えたものもあった。

微小粒子(PM2.5)中のイオン成分では、煙霧も多地点で観測された4月23~25日は硫酸イオン濃度が上昇しており、太宰府、松江、富山で20μg/m3を超えていた。

PAHs成分では、その合計量が太宰府、松江で高くなっていた。

4.2.成分濃度による黄砂の特徴
平成15(2003)年~平成24(2012)年度に黄砂実態解明調査で採取・分析された項目について、成分ごとに整理した。

4.2.1.TSP成分
ハイボリウムエアサンプラ―(HV)で採取されたTSPとその分析項目について、相関行列を算出した。

その結果、TSP濃度とはAl、Feなどの金属類との関係が大きかった。

そこで、TSPとAlの関係をみると、黄砂時にAl濃度が上昇し、さらに成分組成も増加していることが分かった。

4.2.2.イオン成分
微小粒子のイオン成分の相関行列では、SO42-と NH4+、SO42-とK+ 、Mg2+とCa2+などに高い相関関係がみられていた

。SO42-当量濃度とNH4+当量濃度の関係では、相関係数が高く回帰式の傾きもほぼ1であることから、黄砂時は(NH4)2SO4として存在していることが推測された。

微小粒子中のSO42-濃度が15μg/m3を超しているのは、平成19(2007)年5月8~10日、平成19(2007)年5月26~28日、平成24(2012)年4月23~25日の3事例であり、いずれも中国沿岸部からの気塊の流れがみられた。

4.2.3.PAHs成分
PAHsは、ベンゾ[a]ピレンなど11種類の分析が行われている。PAHsの成分として最も高いのはベンゾ[b]フルオランテンであった。

黄砂観測時で且つTSP濃度が100μg/m3以上の高濃度を示したときと、黄砂非観測時でTSP濃度が50μg/m3以下の濃度のときを比較すると、黄砂時には濃度の上昇が観測されていた。

黄砂観測時(かつTSP濃度>100μg/m3)について単純黄砂と混在黄砂に分けて、各成分の濃度を比較すると、混在黄砂時がおおむね1.5倍程度高くなっていた。

PAHs(合計量)が相対的に高い日(2000pg/m3超)の後方流跡線を集約すると、黄砂時特有のモンゴル方向からの流れが主なものであるが、北京、遼東半島、韓国を経由してきているものが多く、また中国沿岸部からの流れもみられた。

4.2.4.農薬成分
農薬類はガス類も含めて採取されており、ジクロルボスなど17種が分析された。

濃度が高いのは、ジクロルボス、フェニトロチオン、ダイアジノンであるが、黄砂による顕著な濃度上昇はみられず、国内での平均的な濃度との差も明確ではなかった。

4.3.成分濃度による黄砂の分類[試算]
過去にTSP中の成分として分析した金属類、イオン類を用い、PMF法によって発生源の寄与を推定する方法について検討した。

因子数を5として計算した時の因子プロファイルは、NO3-で高い硝酸塩系の二次粒子、Al、 Fe、 Mg、 Ca、Srの金属類で土壌系(主に黄砂)、NH4+、SO42-で高い硫酸塩系の二次粒子、Na+、Cl- の海塩粒子、K+のバイオ燃焼と想定された。

最も大きな割合を示しているのは、土壌系(黄砂)で、続いて硫酸塩系二次粒子、硝酸塩系二次粒子となっていた。

5.大規模な黄砂・煙霧の事例解析
5.1. 平成15(2003)~平成24(2010)年度の黄砂観測日
平成15(2003)年度から24(2012)年度の10年間に気象台が観測した全ての黄砂は254日で、連続した日を1事例とすると85事例となる。

この中から大規模な黄砂を抽出し詳細に解析した。

大規模の基準としては黄砂を観測した地点が31地点以上とした。

併せて、この10年間に観測された煙霧についても、31地点以上で観測された日を選び解析した。

5.2.大規模黄砂の事例
大規模な黄砂としては17事例が抽出された。

大規模黄砂の時期は、3月5事例、4月7事例、5月4事例と春がほとんどで、秋は1事例のみであった。
大規模黄砂は、多くの場合西日本から関東までの広がりであることが多いが、一部、北海道、東北まで及ぶケースもみられた。

大規模な黄砂の場合も、硫酸イオン濃度が15μg/m3を超えるような高濃度になることは多く、人為起源の大気汚染物質を多く含む混在黄砂か否かは、日本への気流の経路に大きく関係していると思われた。

黄砂の分類では、単純黄砂が8事例、混在黄砂が9事例とほぼ同数となった。

5.3.大規模煙霧の事例
大規模煙霧は9事例であり、黄砂に比べ、多地点で同時に観測される煙霧の事例は少なかった。

時期も黄砂とは異なり、年間を通して出現していた。

5.4.黄砂・煙霧の特徴
大規模黄砂・大規模煙霧時の後方流跡線の経路について整理したところ、黄砂が主にモンゴル及び中国内陸部を通過するものが中心であり、大規模煙霧は中国沿岸部及び韓国を通過するケースが多くみられた。

さらに、通過位置を緯度5°×経度10°のメッシュに分けて算出すると、黄砂が主に内陸部から沿岸部を経由していること、一方、煙霧は中国沿岸部と韓国経由がほとんどであることが分かった。

黄砂を単純と混在に分類したときの通過割合では、主な経由地域は似たようなものであるが、混在においては中国沿岸部の工業地帯である地域が加わっていた。
大規模黄砂が日本で観測された時に、それ以前、どの地域で砂塵嵐が発生したかをまとめたところ、砂塵嵐の発生地域は、モンゴル全域、ゴビ砂漠を含めた内モンゴル高原地域など中国大陸の内陸部を広く占めていた。

大規模煙霧が日本で観測された時の東アジア地域で観測されたHaze(煙霧)は、韓国、中国沿岸部で同時期にHaze(煙霧)が観測された事例が多くみられた。
大規模黄砂時と大規模煙霧時のPM2.5/SPM比をみると黄砂時は平均で0.50であるが、規模が大きいものでは0.3近くまで下がっていた。

また、単純黄砂は混在黄砂と比べて低い傾向がみられた。

なお、煙霧は平均で0.79あり、黄砂時とは大きな差がみられた。
ライダーの黄砂消散係数とSPM濃度の相関関係を集計した。

相関係数はいずれも高く、傾きは平均307で比較的似通った値となっていた。

これは、大規模黄砂の場合、黄砂消散係数とSPM濃度の関係がおおむね均一で、ライダー消散係数によってSPM濃度の予測がある程度可能であることを示している。