その7:香料の健康影響に関する調査および病院・保育園等における香料自粛に関する要望 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・薬剤弱者のために今すぐにできる対策を
一方、仮にすぐに国として規制導入に向けて取り組んだとしても、基準等の策定までには時間を待たねばなりません。

すでに香料暴露に苦しんでいる多くの人がいて、新たな健康被害の発生も続いており、法令等の整備が未だ整わない現状では、公共の施設や公共輸送機関など公共の場では香料や消臭剤の使用を抑制あるいは自粛するようにする必要があり31)、貴省でできることとして、特に、子どもや高齢者、病気の方など薬剤弱者が長時間すごす施設における「香料自粛の取り組み」を進めていただきたいのです。
今の香りの強い柔軟剤ブームの火付け役となったのは米国製柔軟剤ですが27,51)、米国でも着香製品による健康被害が深刻化し、各地で香料自粛の取り組みが拡がっており、自治体によっては香料禁止方針や職員の香料自粛の行動指針を示しています52)。
また、カナダのノバスコシア州の州都ハリファックス地域都市は無香料の啓発プログラムを実施、2000 年には「香料不使用の方針(No Scent Policy)」を市の職場から自治体施設の公共スペースに拡大することを評議会で承認して、法による規制ではないものの公共施設での香料不使用の取り組みを自治体として奨励しており53-55)、施設のホームページでも着香製品不使用のお願いや香料の問題に関する啓発がされています53,56)。

学校や図書館、バスでの着香製品の自粛など、この動きはノバスコシア州にも拡がっているそうです53,57)。
カナダでは政府関係法人が職場での無香料方針の採用を奨励しています。

政府と労使の三者から成る政労使委員会が運営するカナダ労働衛生安全センターは、香料の健康影響に関する情報や、職場の無香料方針採用に向けての対処方法や啓発方法の具体例等をウェブサイトで紹介し11,12)、ニュースレターへの啓発記事掲載13-15)、啓発ポスターの掲載・販売や16,17)、職場の無香料方針採用を推奨する非営利団体カナダ肺協会の資料紹介など、職場での無香料方針を勧める様々な啓発をしています。

カナダ肺協会は市民からの寄付とボランティアを基盤とした保健慈善活動団体で、加盟する各地域の肺協会とともに肺の健康のための調査、啓発、予防及び政策提言を行っており、香料の健康影響や香料暴露を避ける方法等についてウェブサイトで啓発し18)、職場の無香料方針採用のためのパンフレットやポスター19,20)、ニューブランズウィック肺協会製作の啓発ビデオやポスター21,22)などを紹介しています。

カナダで無香料方針を実施する職場や学校、病院は増え続けているとのことで13,14)、例えば、オンタリオ州のトロント大学やウィメンズカレッジホスピタルなど、ノバスコシア州以外の地域でも無香料方針採用の動きが広まっています58,59)。国の関連機関や施設でも、例えば穀物委員会や空軍医療施設が来訪者などに香料不使用を求めたり、国立図書館・公文書館が利用規約に無香料環境を奨励支持する旨を明示したりしています
60-62)。
日本で先進的に取り組んだのは岐阜市です。

「香料自粛のお願いポスター」を全市的に掲示して呼びかけるキャンペーンを始めたのが2005 年で51,63)、その後2008 年から2009 年頃に、岐阜市のポスター64)や公共の場での香料自粛を初めて呼びかけた水郷水都全国会議での掲示ポスター65)の文面等を参考に、各地の自治体で独自のポスターが作られ、ホームページで呼びかけたり、各地の学校や病院、公共施設等でポスターを掲示したりする動きが拡がりました28)。
岐阜市や岐阜県は、香料の影響はすべての子どもたちの健康に関わる問題ととらえて、過敏症の子どもが在籍している学校だけでなく、各施設や各学校にポスターを掲示するよう通知を出しています。

岐阜市は全施設を対象に、岐阜県は学校の他、医療機関と福祉施設も対象に通知を出してポスターの掲示を勧めています。
しかし、多くの自治体では、基準となるポスターをHPにアップして掲示を勧めていても通知発出の対応はほとんどなく、掲示は各施設の判断に任されています。

また、ポスターの掲示だけでは改善されないという実態もあり、香料の健康影響について保育園、病院や福祉施設など関係者の認識を深めるための啓発や、香料自粛を進めるための他の啓発方法等の工夫が必要です。
各地に香料暴露に苦しむ人たちがいること、アレルギーや喘息、シックハウス症候群の人など、いつ香料暴露により化学物質過敏症を発症するかわからない子どもや大人もたくさんいること、香料が発達途上にある子どもたちに健康上の悪影響を与える可能性があることなどをまず一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。

薬剤弱者と関わる職に就かれている方にはその認識をもって、香料をできるだけ控えていただくことも必要です。

施設として、また、職員の方たちにも香料自粛に率先して取り組んでいただけるように、基準や参考を示していただけないでしょうか。
なお、ポスター案等の基準を示す際には、どうか、定義や説明は正確な表現で、誤解を与えないような表現にしてください。

岐阜市や岐阜県教育委員会のポスター66)をはじめ現在多くの自治体で掲示されているポスターでは、化学物質過敏症の定義に関する記載が不十分ですが、広島県や岡山県倉敷市など一部の自治体で、厚生科学研究「化学物質過敏症に関する研究(主任研究者:石川哲北里大学医学部長(当時))」(平成8年度)で示された定義「最初にある程度の量の化学物質に暴露されるか、あるいは低濃度の化学物質に長期間反復暴露されて、一旦過敏状態になると、その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状を来たす」67)に準拠して見直され、一度に多量の暴露によるだけでなく微量でも長期間の反復暴露によっても発症することの両方について記載があるポスターがあります68-70)。
化学物質過敏症の名称や概念については議論があり、平成15 年度に厚生労働省で開催された室内空気質健康影響研究会により、既存の疾病概念で説明可能な病態を除外する必要性等があるものの「微量化学物質曝露による非アレルギー性の過敏状態」を示す病態の存在は否定できないとして、病態解明や感度や特異性に優れた検査方法、診断基準の開発等の研究の更なる進展が必要との見解が示されています71)。

報告書において、現状では混乱があるとして精度を高める必要性は指摘されていますが、「日本では石川らの提唱する『化学物質過敏症』が一般に使用されている」と述べられており、その後、平成21 年10 月には、標準病名登録マスターに「化学物質過敏症」が病名として登録されました28)。今後も研究の進展が望まれますが、現在のところ、一般には、石川らが提唱した概念、定義の大意が継承されて病名として使用されていると考えられます。
岐阜市をはじめ多くの自治体のポスターでは、「最初にある程度の量の化学物質に曝露して過敏状態になる」ことについては記載があっても、「低濃度の化学物質に長期間反復暴露して過敏状態になる」ことについて記載がなく、実態を表す正確な表現と言えないため、見直していただく必要があります。