その6:香料の健康影響に関する調査および病院・保育園等における香料自粛に関する要望 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・また、香料は成分が揮発して呼吸で体内に取り込まれるのに、吸入毒性についてほとんど検討されていません。厚生省生活衛生局の「芳香・消臭・脱臭・防臭剤安全確保マニュアル作成の手引き」(平成12 年3 月発行)では、「6.過去の健康被害事例について(4)文献等からの情報」の項で、香粧品香料素材の安全性について業界のガイドラインは示されているが、「神経機能障害性や内分泌かく乱作用についてはまだ十分研究されておらず、今後の研究課題となっている」ことや、「一般的に気散する成分を含む製品(例えば化粧品、香水、殺菌剤、抗菌製品、芳香剤、いわゆるアロマセラピー用精油など)はその成分が顔面などの皮膚について吸着濃縮され、airborne allergens (*空気中のガス状や浮遊微粒子状のアレルゲン)となる可能性も考えられている」こと、「製品から気散した成分は主として吸入によって体内に摂取されると考えられるが、成分の吸入による毒性が検討されている場合は少ない」ことに触れています45)が、13 年経った今もその状況はほとんど変わっていません。
着香製品にはさまざまな揮発性物質が含まれており、リモネンやエタノール、アセトン等が検出される他40,46)、中にはアセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の有毒な化学物質を発生する製品もあり46)、様々な製品を使用している人が多数集まって過ごす室内では、それだけ多くの物質により室内空気が汚染されます。

香料等によってつらい症状が出る人にとって受動被曝の問題は深刻ですが、また、香りは個人的な嗜好もあるため、それらの香りを好まない人にとっても受動被曝により不快感やイライラ、集中できないなど心身にマイナスの影響が生じることも考えられます。

香料で症状が引き起こされる自覚のない人であっても、室内空気汚染により健康を害される可能性があります。
香料の健康影響については、一般的疑わしさや懸念があるだけの状況ではなく、研究レベルでの実証も進みつつあり、EU では香料規制の強化に結び付くなど、政治的な動きはこれから更に国際的な流れになっていくはずです。

アレルゲン物質も多く、遺伝毒性、発がん性等を有するものもある香料について、安全性審査を充実させ、無制限に宣伝させないようにすべきであり31)、日本も業界の自主規制に任せて野放しになっている香料製品の氾濫に歯止めをかけるよう規制に乗り出すべきです。
香料の規制に向けて必要な調査・研究をEU 化粧品規則(EC) No.1223/2009 のように、すでに諸外国が規制していることは、日本でも対応すべきで、アレルゲン香料の製品ラベルへの表示の義務付けや製品中の配合率の上限の設定、特にアレルギーを起こす頻度が高い物質の配合禁止等をすぐにも検討すべきです。

ただ、接触アレルゲンとしてだけでなく、airborne allergens として喘息等の症状を引き起こす懸念や吸入毒性についても検証する必要があります。
また、化粧品やパーソナルケア製品以外の洗剤や柔軟剤、芳香剤等の製品についても、香料の成分表示や配合率の規制は必要です。

洗剤や柔軟剤は洗濯物に残留して接触アレルゲンとなる可能性もありますが、揮散してairborne allergens となる可能性もあります。
洗剤や柔軟剤を使用した洗濯物を室内干しする場合は、芳香剤のような室内空間に香料物質が放散される製品と同じく、室内空気を汚染するVOC の発生源になります。

吸入毒性についても検証して室内濃度指針値を設けることや、また、他の発生源から発生するVOCと併せて、TVOC の室内濃度暫定目標値を超えないようにするための規制も検討する必要があると思います。
貴省は「シックハウス問題検討会」の報告書「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-(第4回~第5回のまとめについて)」(平成12 年12 月)の「室内空気質指針値の適用範囲の在り方について」で、以下のように述べています。

「本検討会で策定される指針値は、生産的な生活に必須な特殊な発生源がない限り、あらゆる室内空間(下記)に適用されるべきである。」そして、あらゆる室内空間として、「住居(戸建、集合住宅)、オフィスビル(事務所、販売店など)、病院・医療機関、学校・教育機関、幼稚園・保育園、養護施設、高齢者ケア施設、宿泊・保養施設、体育施設、図書館、飲食店、劇場・映画館、公衆浴場、役所、地下街、車両、その他」があげられています47)。
香料製品が氾濫する中、私たちはすでに、こうした長時間を過ごす様々な場所で香料に暴露し続けており、香料が室内空気質に与える影響についても調査・研究を行うことが急務と考えられます。
また、特に残香性の高い商品については、多くの人がそのために暴露が長引き一日中香料に曝されることになり苦しんでいます。

その成分の分析や香料の分解速度に与える影響などの調査をおこない、香料として分解に時間のかかる物質や助剤として香料物質の残留性を高める物質を使用しないなどの規制を設ける必要があるのではないでしょうか。

なお、においを感じることができる最低限の濃度である閾値はにおい成分ごとに異なり、低い濃度でもにおいを感知できる成分もあれば、高い濃度にならないとにおいを感知できない成分もあって、濃度とにおいの強さの関係が一定ではないため、一部の香料物質について、例えばアレルゲンとしての強さや毒性学の観点から香料成分の配合率の上限や室内濃度指針値を決めても、それが香料製品の「においの強さ」の規制にはならない可能性があります48)。
因果関係の検証はまだであっても、柔軟剤等のにおいが強い製品の販売の伸張に伴って健康被害の訴えも増加していることから、香料含有製品の「においの強さ」が一定程度以上に強くならないように香料の配合率の上限を設ける規制についても検討する必要があると考えられます。

国内法による「においの強さ」の規制としては、事業者を対象とする悪臭防止法で、「臭気指数を基にした敷地境界線上のにおいの強さについて規制基準値」が設定されていて、「におい」の規制方法について検討する際に参考になる考え方と思われます49)。

臭気指数は、人の嗅覚で測定するもので、においの強さ(臭気強度)に関係性があって、臭気指数の値(においのついた空気をにおいが感じられなくなるまで薄めたときの倍率を基に算出された値)が高い方がにおいの強さも強いということになります。
隣家の洗濯物から漂う柔軟剤のにおいが敷地境界線上ではどのくらいになるのか、実際の空気の測定値(臭気指数)はわかりませんが、神奈川県消費生活課が「柔軟剤のにおいの比較調査」で調べた、測定機器によって計測分析された「臭気指数相当値」が参考になると思われます50)。

サンプルの採取方法の違いもありますが、15 検体中13 検体の数値が22~28 と非常に高く、実際の使用状況で敷地境界線上の規制基準値(自治体によって異なり住宅地等で10~15)を超えるにおいである可能性が高いと考えられます。

香料含有製品の開発の段階で、香料成分や調合香料の臭気指数相当値を基に、通常の使用方法でこの基準値を超えない程度のにおいの強さになるように製品中の香料の配合率を決めることはできるのではないでしょうか。

メーカーが自主的に取り組まないのであれば、関係省庁により何らかの方法で製品のにおいの強さについて規制すべきと考えます。
規制の方法については様々なアプローチについて検討し、香料による健康被害の発生を低減しうる実効性のある規制を導入してほしく、そのために必要な調査・研究を行っていただきたいと思います。