http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/committee/list/data/enviroment/news_46.pdf
シンポジウム「身の回りの電磁波とその問題」
前化学物質・食品安全部会長
電磁波シンポジウム開催の趣旨2010年4月10日、霞ヶ関の弁護士会館会議室で、電磁波問題に関するシンポジウムを開催しました。
開催の趣旨は、携帯基地局の設置による健康影響や電磁波過敏症と診
断された人たちの実態を踏まえ、(放射線等の電離放射線以外の)電磁波による健康影響を考慮した規制がない日本の現状と、これを問題とする一部自治体や国際的な動きを紹介した上で、将来取り返しのつかない被害を発生させないためには今後どのような手だてが必要かなどを、シンポジウムを通して一般の方にも考えてもらうことにありました。
熱気あふれる会場
当日は全国から291名の来場者があり、会場は熱気にあふれ、電磁波過敏症の方などで途中気分が悪くなり廊下で聞き入る人もいましたが、みな最後まで熱心に耳を傾けていました。
一般の方から寄せられた意見や感想も多く、日本ではあまり報道されない電磁波問題についての、市民の関心の高さと日弁連への期待の大きさを感じました。
プログラムの内容
電磁波過敏症と診断された患者の報告に始まり、坂部貢氏(東海大学医学部教授)の「医学界における研究状況、過敏症者の医療について」と題する基調講演、その他のパネリストである大久保千代次氏(電磁界情報センター所長)、加藤やすこ氏(VOC-電磁波対策研究会代表)、新城哲治氏(医師・被害者)、本堂毅氏(東北大学大学院理学研究科助教)、中村多美子会員(大分)らから、それぞれ、WHO(世界保健機関)、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)―日本が依拠する―の研究やリスクの評価状況、より厳しい電磁波規制を採用する欧米諸国の例、携帯基地局を設置されたマンション住民に様々な健康被害が生じた沖縄県の事例報告、電磁波の物理的な仕組み、国内外の訴訟例などについて報告がありました。
後半のパネルディスカッションでは、
①電磁波問題とは何か、
②電磁波の有害性を肯定・否定する研究とそれらの評価における問題点、③国内で独自に条例を制定したり国へ規制強化を求める自治体の動き(携帯電話中継基地局の設置についての条例を定めた鎌倉市など)に関連して、住民の理解を得るための前提となる情報提供が上からの一方向になっている問題点、
④現に電磁波過敏症を発症している人たちの日常生活の窮状とその救済方法などについて、活発な議論が交わされました。
旭川市議会議員の山城えりこ氏の会場発言もいただきました。
縟今後の課題
「有害性が不確実な問題をどう扱うべきか」という点について、予防原則・予防的取組みのための前提となる社会の合意を形成するには、公正でオープンな研究や実態調査、(携帯基地局設置などの際における)アセスメント手続等がきちんとなされることが必要であると考えさせられました。
また、電磁波過敏症については人権救済の点から早急な対策が必要と思われました。
意見が異なるパネリスト同士の議論の中で、タバコの有害性についてさえ科学的に確実とされるのに50年かかったという話があり、「有害性が確実でないから(不確実だから)安全として扱う」ことへの疑問を会場全体で共通に感じていた様子だったのが印象的でした。
電磁波問題は、携帯電話が急速に普及したここ15年くらいで浮上してきた新しい問題といえます。
そのような電磁波問題の現状と今後の課題が浮き彫りになった点でも、意義のあるシンポジウムだったと思います。