その2:多種類化学物質過敏症および慢性疲労症候群患者の環境化学物質に対する遺伝的感受性の亢進 | 化学物質過敏症 runのブログ

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Ⅱ.患者および研究対象項目
患者:ドイツ全国から、支援団体や環境問題の研究家から紹介されてきた40名の患者を対象とした。

20名の女性と20名の男性である。年齢は27歳から59歳にわたっている。

患者の症状、現在の環境負荷状況の問診、一般診察、臨床検査を行った。これら患者は次の3群に分けた。

A群 殺虫剤発症群
 平均年齢は42,8歳。

8名が女性、6名が男性であった。

末梢血液や尿から、殺虫剤が高い濃度で検出された。

ガスマスで11名の尿中から、殺菌剤ペンタクロールフェノール(PCP)50μg/1から0,5μg/1が検出され、特に1名の農業従事者では12μg/1と対照値(<25μg/1)の500倍に達していた。

殺虫剤ヘキサクロロヘキサンはEDTA採血をα、β、γに分別し、5例にγ‐ヘキサクロロヘキサン(HCH、リンデン)が0,4~1,2μg/1の値が示された。さらに3例にPCB0.8~1.6μg/1を検出し、1例には高速液クロで殺鼠剤に使用されているクマリン誘導体が検出された。

2名の農業従事者と1名の花屋の例は、職業的な暴露からと思われた。

その他の職業では、4名の家庭主婦、1名の保険業者、2名の事務員と銀行員が含まれており、4名が身体障碍のために受診時には失職していた。PCPおよびHCH汚染患者の多くは、室内空気の分析を行い、居住環境負荷が明らかになった。

本群患者の症状には、慢性疲労とともに、神経系の障害、持続性の頭痛、視力障害、平衡感覚の障害、めまい、筋力低下が認められた。

B群 重金属発症群
平均年齢は37.6歳であった。

14名(6名の女性と8名の男性)で重金属水銀が検出された。

それは多分アマルガムから来たものと思われた。水銀はEDTA採血血液と唾液から、原子分光光度計で検出した。
 血液は11~6850μg/1、唾液からは4~1350μg/1であった。

5名については、補足的に歯の金属に対する感受性を調べる為にELISAテストを行った。

金属工業従事者の一人は血清アルミニュム濃度が10150μg/1あり危険値であった。
 患者はしばしば口内炎を発症し、さらに歯周炎、自律神経障害(例えば過敏性胃腸症状)、そしてハウスダスト、栄養剤、花粉に対するアレルギーのような免疫疾患へと発展する傾向があった。

C群 毒物発症歴が明らかでない群
 平均年齢は51歳であった。

11名の患者(6名の女性と5名の男性)は環境汚染物質による曝露歴はなく、また臨床検査でも負荷物質が証明されなかった。

これらの患者では、関節痛、頭痛、自律神経失調を伴った再発性のウイルスや細菌感染が認められる傾向があった。
酵素と遺伝子解析:地域のホームドクターと協力して、採血したEDTA加全血は、ミュンヘンの中央検査室へ24時間以内に送られた。

第一相酵素のCYPIA2とCYPIA6を、Detox-Test(カフェインクリアランステスト)による酵素法で測定した11.12)。

第二相酵素としては、GST-α、GST-μ、GST-π、GST-θの遺伝子イムノアッセイで測定した13.15)。

さらに第二相酵素のGST-α、GST-μ、GST-π、GST-θの遺伝子シークエンスを調べた。

さらに末梢血からのDNAを所得して、活性酵素や解毒速度に影響を持つ多型性をPCRや制限酵素によるフラグメントの多型性16~19)やDNAシークエンス(310、Applied Biosystems, Weiterstadt)を調べた。