・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
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・EU、ネオニコチノイド農薬使用禁止を決定
理事 水野 玲子
欧州連合(EU)はついに、ミツバチへの悪影響が懸念されるネオニコチノイド農薬の3成分について、暫定的ではあるが禁止を決定した。
3成分とは、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムである。
今回の禁止の内容は、温室内など一部の例外をのぞき、農作物の種子処理(消毒)、土壌処理、葉面散布をEU域内で禁止するもので、取りあえず今年の12月1日より2年間とする。
この措置は予防原則の考えに基づいており、2年間この措置を継続したあとに再び検討し、その後の措置を考えるというものである。
このようにEUが現段階で予防原則適用に踏み切ったことにより、ヨーロッパではミツバチだけでなく、鳥類など貴重な生物の減少傾向に少しでも歯止めがかかるのではないかとみられる。
ネオニコチノイド農薬の問題は、2009年より本ニュース紙面で何回も取り上げてきたが、1990年代よりヨーロッパ諸国でミツバチ大量死や大量失踪の原因として疑われてきた農薬である。
日本でも、2005年ごろから岩手県や北海道、九州など全国的にこの農薬が関連していると思われるミツバチ大量死が続いてきたが、いまだに日本では何ら具体的な対策が講じられていない。
EUの今回の決定は、今年1月末に欧州食品安全機関(EFSA)が、ミツバチ大量死とネオニコチノイド農薬との関連を“許容できないレベルの危険をハチに与える”と正式に認めたことに基づくものであるが、EFSAがそのような報告書を発表したのは、2012年に世界でも一流の科学雑誌であるサイエンス誌やネーチャー誌に、両者の関連を裏付ける科学的証拠が掲載された論文が3つ発表されたことによる。
これらの論文の発表によって、20年来続けられてきたミツバチ大量死の原因をめぐる議論はとうとう決着することになった。
さらに、ヨーロッパ諸国の市民団体の動きがEUの今回の決定に大きな影響を及ぼしたようである。
グローバルな市民のコミュニティであるAvaazによれば、ヨーロッパではこの組織のメンバーだけでなく、何百万人もの人が加わってこの運動を盛り上げた。
市民による各国大臣への2 年間にわたる大量のメールや電話がけ、ロンドン、ブリュッセル、ケルンでの抗議デモ、260万人もの署名など数々のアクションの結果だったのである。
日本でも市民レベルでのさらなる運動の展開が今後も必要とされるだろう。
一方日本では、農水省や環境省の反応はほとんどないに等しい。
そもそもミツバチ大量死が全国で多発した後も、農水省が行ったことといえば、ネオニコチノイド農薬のイネのカメムシ防除などでの撒布の時に“養蜂家と農家が連絡を密にとってミツバチを避難させるべし”とする行政指導を行っただけであり、農水省の研究機関(畜産草地研究所)によるミツバチ大量死の原因に関する調査も、農薬の危害に注目するよりは、複合要因によると結論付けられている。
また、日本農業新聞(2013/5/26)によれば、農水省は今回のEUの動きを静観する模様で、日本国内の規制は見直さない方針という。
EUのこの決定を受け農水省は、国でこれら農薬に関連するシンジェンタジャパン、バイエルクロップサイエンス、住友化学などの3社からの意見をあらためて聞きその方針を決めた模様であり、農薬企業と癒着して危険農薬の使用を継続する農水省のやり方は、まさに原発企業との癒着から解放されない日本の行政のあり方そのものである。