Q2. 農薬による蜜蜂の被害を防ぐため、日本ではどのような対策が
とられているのでしょうか。
蜜蜂に対する影響試験の結果に基づき、農薬を使用する際に注意すべき事項をラベルに記載することが定められています。
農林水産省は、農薬登録の前に、農薬の成分を蜜蜂の体に塗布したり、砂糖水に混ぜて蜜蜂に与えたりして、蜜蜂に対する影響を試験して、その結果を登録申請の際に提出するよう、農薬の開発者に求めています。
試験の結果、その農薬成分の蜜蜂に対する毒性が比較的強い(例えばその成分を20%含む薬剤を1000 倍に薄めた散布液が1 匹あたり1 滴分(約0.05 ml)付着しただけでも試験に供した蜜蜂の半数が死んでしまう程度)ことが判明すれば、
・散布の際に巣箱及びその周辺にかからないようにする
・養蜂が行われている地区では都道府県の畜産部局と連絡し、蜜蜂の危害防止に努めるなどの注意事項を、その農薬のラベルに表示しなければなりません。
現在我が国で農作物に広く使用されている有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などの殺虫剤の場合、散布液が0.001 ~ 0.0001 ml(1 滴の数十分の1 ~数百分の1)付着しただけでも蜜蜂が死ぬ可能性があるので、上記の注意事項を守って使用するよう、都道府県を通じて農家を指導しています。
蜜蜂に農薬がかかるのを防ぐため、農家と養蜂家との間の連絡を密にするように指導しています。
養蜂家の方が季節によって花のある地域へと巣箱を移動させることがあるので、農家が農薬を使用するときに、蜜蜂の巣箱が近くにある場合もない場合もあります。
そこで、農林水産省は、都道府県を通じて、農薬を使用する農家と養蜂家との間で、巣箱の位置・設置時期や、農薬の散布時期などの情報を交換し、巣箱を退避するなどの対策を講じるよう指導しています。
この指導に基づき、養蜂の盛んな地域を中心に、各地で以下のような取組が行われています。
・養蜂組合等が、巣箱マップや養蜂家の連絡先などを、周辺農家や、市町村、農協、無人ヘリコプターによる防除を実施する者などに提供する。
農薬の散布前には農家が周辺の養蜂家に連絡する。
・普及指導センターや農協が、当該地域の農薬の使用時期や無人ヘリコプターによる防除の計画を、養蜂組合等を通じて、あらかじめ養蜂家へ提供する。
・普及指導センターや農協が農薬危被害防止の目的で定期的に開催する協議会等に養蜂組合等が参加し、養蜂家からの情報を積極的に伝達する。
蜜蜂の被害を減らすための対策を、今後も引き続き検討していきます。
蜜蜂の被害があったときには、養蜂家から都道府県に届け出てもらい、まず都道府県の養蜂を担当する部局が被害の状況、ダニ、ウイルスへの感染の有無などを調査しています。
その結果、農薬が原因である可能性がある場合は、都道府県の農薬使用の指導を担当する部局が周辺農地の農薬の使用状況を調査し、調査結果を農林水産省に報告します。
また、農地の周辺で蜜蜂が農薬を浴びたり取り込んだりしているのかを明らかにする試験研究を農林水産省が実施しています。
これらの調査や試験研究から、農薬の使用によって蜜蜂に被害が発生すること及びその仕組みについて新しい知見が得られれば、直ちに被害を減らすためのより効果的な対策を検討し、実施します。
なお、ダニや病気も群内の蜜蜂の数が減少する原因となることが知られています。
これらによる悪影響を防ぐため、2011 年3 月に養蜂家向けに刊行された「養蜂マニュアル」(※)(→http://www.maff.go.jp/test/chikusan/sinko/pdf/youhouka.pdf)は、蜜蜂の衛生管理対策をとるように勧めています。
※ 平成22 年度の農林水産省の補助事業として、(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所の蜜蜂の研究者、大学の研究者や各地の養蜂家が共同で取りまとめたものです