その9:第8部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

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9 大阪地判平成18 年12 月25 日判時1965 号102 頁
[事実の概要]
この事件は,Yが設置する病院に看護師として勤務していたXが,検査器具を洗浄する際に使用する消毒液に含まれていたグルタルアルデヒドの影響で化学物質過敏症に罹患したとして,Yに対し,雇用契約に基づく安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求した事件である。

[判旨]
本判決は,Yの安全配慮義務違反を認め,これによりXが喪失した労働能力を14%とした。

その要旨は,以下のようにまとめることができる。

① 使用者は,雇用契約上の付随義務として,労働者に対し,使用者が業務遂行のために設置すべき場所,施設もしくは器具等の設置管理または労働者が使用者の指示のもとに遂行する業務の管理にあたって,労働者の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている。

② 平成7 年(1995 年)頃から,グルタルアルデヒドの医療従事者に対する危険性が具体的に指摘されており,XがY病院に配置されていた当時,医療従事者がグルタルアルデヒドの蒸気により眼,鼻などの刺激症状という副作用が生じることが認識されていた。
Xが平成10 年(1998 年)6 月頃,Y病院の衛生管理者であったA医師に鼻粘膜と咽頭粘膜の刺激を訴え,以後もY病院において診察・治療を受けていたのであるから,Yには,長時間グルタルアルデヒドを吸入する可能性のある場所で勤務していたXの業務内容からすると,Xの刺激症状が同室内での洗浄消毒作用に起因するものと認識することは十分に可能であった。

③ Yの労働者に比較的軽微な症状が出現し,それがYの業務に起因する疑いが相当程度あり,その症状が一過性のものか,より重篤なものになるかが定かでない場合,Yにおいて容易に原因を除去し,あるいは軽減する措置を採ることができるときは,そのような措置を講じるべき義務があるというべきであり,特段の措置を講じることなく,従業員の症状経過を観察していた場合には,Yは上記の義務に違反したというべきである。