その4:ネオニコチノイド系農薬のヒト・哺乳類への影響 | 化学物質過敏症 runのブログ

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3.脳内nAChR の働き
 ヒト脳内ではコリン作動性神経系を主に担う代謝型mAChR の研究が進み、nAChR の役割は長らく不明であった。

近年nAChR は記憶・学習・認知などの高次機能に関与することが分かってきた。

図3のように脳内ではnAChR は広い領域で発現しており、ACh はnAChR を介して、ドーパミン、セロトニン、GABA、グルタミン酸など他の神経伝達物質の放出を促進し、多様な脳機能に影響を及ぼすと考えられる。

また nAChR は低濃度(< 1μM)のニコチンにより脱感作を起こしACh に反応しにくくなるので、ニコチンを摂取し続けるとnAChR の機能と数が変化し、ニコチン依存症の原因になると考えられている。

脳内nAChR は、シナプス後部だけでなく、シナプス前部や細胞体、樹状突起にも局在して多様な機能を担っている。

精神疾患との関連では、α7は統合失調症、α4β2は鬱病との関連が指摘され3)、アルツハイマー病の脳では、ACh とα4β2の減少や、α7とβ アミロイドの凝集が報告されている4)。

自閉症児の脳では、nAChR の発現が減少していることも知られている5)。nAChR はその機能の多様性から、アルツハイマー病や自閉症などの創薬のターゲットとしても研究が進んでいる。

4.脳発達におけるnAChR の広汎な働き
 ヒトの脳発達では、nAChR が妊娠初期から高発現し、細胞増殖、細胞死、移動、分化、シナプス形成などの脳の発達過程に関わることが分かってきた6)。

胎児-青年期にいたるまで、脳幹のコリン作動系のみならずドーパミン、セロトニンなどアミン系神経回路、海馬、小脳、大脳皮質などの正常な発達に、nAChRが多様に関わっている。

5.非神経組織におけるnAChR(表1)
 さらに哺乳類では、ACh とnAChR, mAChR は神経系だけでなく、免疫系、皮膚・肺の上皮細胞、胎盤、卵巣など生殖器官に至るまで広範囲な組織に認められている2)。

非神経組織におけるnAChRは、Ca 選択透過性の高いα7が多い。

免疫細胞に発現している α7は、炎症反応の調節に重要な働きを担い7)、アトピー性皮膚炎では、表皮の角質細胞に発現しているnAChR, mAChR が関与しているという報告もある8)。

肺癌の発症では、肺組織に発現しているα7とニコチンの関与が示唆されている9)。