その8:第3部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・No.
研究テーマ
研究の要旨


10シックハウスの実態解明と防除対策に関する実証的研究
:2000年から2005年の6年間にわたり、宮城県内のSHSが疑われる症例を対象として、居住環境ならびに健康状態に関する調査を実施し、発症要因に関する解析を行った。

一部の住宅では追跡調査を実施し、室内環境および医学的治療による効果について継続的な観察を行った。

対象住宅の室内空気は、一般住宅よりも高濃度のホルムアルデヒドやp-ジクロロベンゼンなどによって汚染されており、換気量不足が室内空気汚染の原因の1つであることが判明した。

対象住宅の居住者の約半数(46%)がSHSに該当し、「SHS」「non-SHS」の2群間において住宅の化学物質濃度を比較した結果、「SHS」群の方がホルムアルデヒド、トルエン、p-ジクロロベンゼンなどの濃度が高かった。
その後、内装材や換気設備に対策を実施した住宅では、経年に伴う化学物質濃度の減衰効果が顕著であり、その半数では室内環境の改善に伴い自覚症状や他覚的所見が快方へと向かった。

ただし一部の住宅では、年齢の上昇とともに精神系トラブルへと悪化する児童の症例が観察されたことにより、早期の治療および室内環境の清浄化が非常に重要であると言える。

11
シックハウス症候群に関する遺伝要因に関する研究
:(平成15年度)
シックハウス症候群の遺伝要因を追求するためにNTE(NeuropathyTarget Esterase)遺伝子を候補遺伝子として、見いだされた多型箇所のうち5遺伝子座について、シックハウス症候群集団および健常者集団を用いて有意差検定を行ったが、患者集団において統計的有意差を示す対立遺伝子や遺伝子型は見出されなかった。
(平成16年度)
引き続き、NTE遺伝子の遺伝的多型箇所の検索および遺伝マーカーとしての有用性の検討を行い、見出された多型箇所のうち45遺伝子座について、シックハウス症候群患者集団および健常者集団を用いて有意差検定を行ったが、患者集団に於いて統計学的有意差を示す対立遺伝子や遺伝子型は見いだされなかった。(平成17年度)
平成16年度までに、NTE遺伝子領域において見出されたMinora allele
frequencyが0.2以上の多型箇所55箇所のうち53遺伝子座について、シックハウス症候群患者集団および健常者集団を用いて有意差検定を行った。

その結果、エクソン2における非翻訳領域存在する遺伝マーカーrs604959において、統計学的有意差を示す対立遺伝子が見出された。

12
シックハウス症候群の眼血流動態に関する研究
:シックハウス症候群患者における眼循環動態、とくに網膜循環と中心窩脈絡膜循環を評価し、シックハウス症候群の眼症状に眼循環障害が関与しているかを検討した。

本研究からも、高濃度ホルムアルデヒド曝露によって眼循環障害が引き起こされることが示唆された。

とくに、網膜動脈血流量が変化せず、中心窩脈絡膜血流量が減少した結果はシックハウス症候群患者における研究から得られた知見、すなわちシックハウス症候群患者では網膜血流量は変化しないが神経支配の豊富な脈絡血流量は減少するという結果と一致している。

本研究は、あくまでも急性曝露実験であり、検討しなければならない点も多いが、とくに原因物質がホルムアルデヒドである場合には、シックハウス症候群の病態を考える際にホルムアルデヒドによる眼循環障害の可能性も考慮しなければならないことを示唆すると考えられる。

シックハウス患者とホルムアルデヒド曝露との眼循環における類似性を初めて報告した。