その5:第3部:化学物質過敏症に関する情報収集、解析調査報告書 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・[2]シックハウス症候群の病態解明、診断治療法に関する研究
本研究は、平成12~14 年度にかけて旧厚生科学研究費の補助を受け、室内空気汚染により発症する健康障害の病態解明、診断及び治療に関しての研究を行い、これに引き続き平成15~17 年度にかけては、臨床研究を主体として、低用量環境化学物質の生体への影響についてシックハウス症候群等を中心に研究し、診断設定に向け、他覚的検査法の開発、疫学、環境化学物質の室内空気中濃度の測定、検診、治療、対策を行うことを目的として研究を実施したものである。
ここでは、これらの研究成果を総括した「平成15 年度~17 年度 厚生労働科学研究費補助金 健康科学総合研究事業 微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究 総合研究報告書」(平成18 年3 月)に記載のある研究テーマ及びその要旨を表-4.1.9 に示す。


表-4.1.9(1) シックハウス症候群の病態解明、診断治療法に関する研究テーマ及び研究要旨-1

No.
研究テーマ
研究の要旨

1
有機リン系殺虫剤が影響したと思われる症例の経過に関する対査
研究
:有機リン系殺虫剤が影響したシックハウス症候群・化学物質過敏症例の長期追跡結果を報告した。

方法:シックハウス症候群で有機リン系殺虫剤がその経過に強い影響を及ぼしていたと考えられる患者3例の臨床経過を述べた。

室内、化学物質濃度を測定した。

脳内酸素モニターNIRO300による起立試験、ガス負荷試験前後の起立試験、ウエクスラー式児童用知能検査第3版(WISC-Ⅲ)を用い追跡した結果を報告した。


2
有機リン慢性神経毒性研究に関する文献的考察
:有機リン中毒の臨床症状について、一般疫学調査、小児への影響、視覚感覚系障害、末梢神経障害、精神・心理的影響、神経症状等について、過去10年間の世界の文献を収集しとりまとめた。

3
シックハウス症候群の客観的評価法に有用な生理学的パラメーター抽出と標準化
:平成15年度
シックハウス症候群の診断には異常所見を捉えやすい眼球運動検査が不可欠である。

本研究では重心動揺検査を施行し、シックハウス症候群患者にどのような検査上の特徴がみられるか、また球運動測定検査の裏付けとしての重心動揺計による検査が、診断において有効か検討した。

重心動揺測定でも脳性障害の異常が70%以上認められるが、迷路性障害の異常も20~25%程度認められ、中枢性神経機能障害と末梢性神経機能障害の両者の障害が疑われた。
平成16年度微量化学物質に対して過敏性を有すると判断された被験者に対して、二重盲検法による微量化学物質曝露負荷試験を施行、主として施行時の自覚症状の変動・脳血流量の変動について評価した。

日常的に化学物質に対して過敏性を有すると自覚している多種多様な愁訴を呈する集団から、それらの愁訴が、微量化学曝露がどの程度関与しているかについて、高い信頼性をもって評価するのは、曝露負荷前後における自覚症状の比較のみでは、困難であることを今回の結果は示していると判断できる。
平成17年度シックハウス症候群患者の病態を把握し、治療への道筋を開くために、総合的な抗酸化能力(PAO)を評価・検討した。

その結果、健常者群、患者群共にそれぞれ男女間で統計学的に有意な差は認められなかったが、健常者群と患者群では、患者群でPAO値は低く、統計学的な有意差(p<0.01)が認められた。

以上のことから、シックハウス症候群患者では、健常者と比して抗酸化能力が低いために、日常的な酸化ストレス状態が生じやすいことが推察される。