ですから、このような化学物質を見ると、どのような決定が企業内でなされるのか、有毒な化学物質の規制のどこが悪いのかという疑問を持たざるを得ません。
それでも希はあります。
私は、内分泌学、免疫学、生化学、分子発生生物学、神経発生学、電子顕微鏡学などの分野のパイオニアがでてくることが、われわれの救済につながるのではないかと考えています。
毒性学とは違ってこのような基礎研究は、規制を目的にするのではなく、単にわれわれがどのように発達し、生殖し、機能し、行動できるのかという謎をよりよく理解することを目標としているのです。
言い方を変えれば、何が人間を人間らしくするのかを研究目的にしているのです。
現在、何百種類もの化学物質が内分泌機能に干渉するという点について、専門家によりレビューされた論文は数千本にもなります。
その中の多くが、これまでに試験された化学物質の用量の何千倍も低い用量での影響について論じたものです。
2003年に戻ってみましょう。9.11の2 年後のことです。
私の孫の大学生が何時間か私のコンピューターで新しい研究論文を読んでいまして、私の方を向いてこう言いました。
「どうして、こんな『子宮内の胎児への産業界のテロ』としか考えられないことが起こっているの」
大統領閣下、もしあなたが、私たちの国家と経済に最も切迫した脅威となるテロリストを許さないと本当に思うならば、忍び寄る化学物質のテロを最優先に位置付ける必要があります。
そして、これらの化学物質には安全なばく露レベルが存在しないことをよく覚えておいて下さい。
非常に低いレベルでこれらの化学物質は我々の体や胎児に浸透します。その低いレベルとは、化学物質をラジオアイソトープ(放射性同位体)でラベルして個々の化学物質1分子がカウントされ、ようやく濃度が測れる程度のごく低いレベルなのです。
大統領閣下、私たちが入り込んだ落とし穴から出る最も良い方法は、落とし穴をこれ以上深く掘るのを止めることです。
その道はここ、今あなたがいるところにあります。私たち国民の長としてのあなたなら、そこに入り国民を助けることができるのです。
破壊的ともいえる気候変動、内分泌関連の病気の増加は、化石燃料とその副産物の利用増加と密接に関連していることを覚えておいて下さい。
石炭や石油、天然ガスを手に入れるために地球のなか深く穴をドリルで掘り進むことによって私たちは意図せずに、そして破局的に、生物圏と人間の子宮の化学を劇的に変えてしまったのです。
一刻も早く何か手を打たなくてはなりません。
あなたは、この悲劇のゆくえを変え、そしてその問題の源を正すことができる最高の立場にいるのです。