これらの多様な子どもの疾患は、一昔前には非常に珍しいものでした。
それらは化石燃料由来の合成化学物質が、私たちの内分泌機能や体を統括するシステムである膵臓、甲状腺、副腎、生殖器、そして脳のあらゆる領域に及ぼした影響の結果なのです。
そして現在では、脂肪や胃や腸もまた内分泌器官の一部分で、それらもホルモンを作り、ホルモンにコントロールされて働いていることが分ってきています。
ホルモンは、胎児が子宮内でどう成長するかを、そして私たちの体がどのように機能するかをコントロールしています。
ホルモンは私たちの感情にも影響をあたえ、共感する能力やセクシュアリティ、私たちが見たり聞いたり、行ったりすることをまとめて結論に到達するまで情報を処理する能力、そして最も大切なことは、お互いに向き合って社会的な関係を築き、問題を解決する能力に影響を与えるのです。
本質的には「ホルモンの作用が私たちを人間らしくする」ものなのです。
今日、赤ん坊が生まれた時に、その子が正常かどうかをチェックすることは、昔のように指の数を数えたりするような単純なものではなくなりました。
では、どうして子宮内の内分泌機能「ホルモン」は、ほんの少しの量(ppbレベルまたはpptレベル)の合成化学物質によって、その繊細な働きをしている機能をわずか3世代か4世代で突然傷つけてしまうのでしょうか。
1950年代に私の子どもが生まれた時には、合成化学物質がもたらす不可避な疫病の異常な広がりを誰一人として想像しませんでした。
その当時私たちは、母親の子宮や胎児の脳にはしっかりとした関門(胎盤・血液脳関門)があり、それは人工的合成化学物質を通過させることはないとする通説を信じていました。
それが1968年、母親がアルコールを摂取することによって、それが関門を通過するということが分かり、この研究が、その後の多くの他の合成化学物質による胎児の発達に関する研究や集中的な検証への扉を開くべきだったのですが、残念ながら現実にはそのようにはなりませんでした。
1940年代や50年代に戻ってみてみましょう。当時、より多くの合成化学物質を開発するため数多くの企業の実験研究施設が世界中に作られました。
そして企業は利益を得るために、毒性のある化石燃料の副産物を原料として農薬、プラスチック、洗剤、化粧品の成分、食品添加物などを生産しました。
これらはみな、新しい化学によって作り出されたもので、よりよい生活を実現するという「希望」のもとに私たちに売りつけられてきたのです。
そして50年代と60年代、米国とロシアは宇宙開発に巨額の資金をつぎ込み始めました。
私たちをとりまく宇宙に到達するために、ロケットの建築資材を鉄よりも軽量化し強くする革新的な化学物質が開発されました。
こうした新しい技術革新によって、私たちは月や火星にも行けるようになり、さらに家庭やオフィス、レジャーのための新しい製品がもたらされたのです。