・内分泌かく乱物質
Endocrine Disruptors
5.10 内分泌かく乱物質に関する主題は本委員会公聴会の間に繰り返し浮き彫りにされた。
ある人工物質はホルモンあるいは内分泌系に変化を生じるであろう、それらは内分泌かく乱物質と呼ばれる。
ホルモン分泌をかく乱することにより、内分泌かく乱物質は生理的不均衡を起こす。
例えば人間で、肥満及び糖尿病・骨の脱石灰はこの種のホルモン不均衡の結果であることがある。内分泌かく乱物質は次の3つの部門になる:
1)模倣物、天然ホルモンと同じ化学反応を起こさせ、まるで実際それがホルモンであるかのように身体によって認識される;
2) 遮断物、細胞受容体に「鍵をかける」ことにより天然に作られたホルモンが細胞に入ることを妨げる;
3) 誘発物、通常ではホルモンによって作られない細胞反応を起こさせる。69
5.11 多数の農薬が、米国農業交易政策研究所(IATP)が設立した米国内分泌かく乱物質情報センター(EDRC)が整えた、ホルモンシステムに影響を持つと疑われている化学物質に関するリストにある(付録5.1:既知及び推定内分泌かく乱物質リスト)。
リストに示された物質の半分は有機塩素グループの一部である。この組織によると、人体内でこれらの物質のわずかな濃度(1兆分のいくつか)でさえ、内分泌システムに影響を及ぼすために十分であるだろう。
現時点で、科学者はこの問題の範囲に関して分裂している。
大部分の人は、内分泌かく乱現象に関して適切に理解しようというのなら、更に集中した研究が必須であると信じている。
一部の研究者は、研究された大部分の物質はほ乳類(人間を含む)に少なくとも影響が少ないように見えると信じている。
他の研究者は、内分泌かく乱化学物質の影響は胎児と発達中の子供で主に見られると考えている。
さらに他の研究者は、影響の範囲は多数の要因に依存して変化するだろうと示している。
5.12 この点で、世界自然保護基金は、内分泌かく乱物質に関して研究が行われれば行われるほど、一層多くの科学者がこれらの製品が恐らく原因である健康問題の広がりに気づくであろうと信じている:
カナダで用いられている農薬リストとほぼ相当する米国で用いられている現在使用中の農薬重量の約60%(これらは農業用農薬であるだろう)は、既知の内分泌かく乱物質である[...]。
こらの統計の証拠はピアレビュー科学文献及び政府報告に由来する。
このリストは新しい研究が発表されるにつれて拡大し続けている。70
ホルモンかく乱物質として作用すると疑われる農薬は、乳癌及び前立腺癌・精巣癌・子宮内膜症・異常な性発達・男性受精能低下・甲状腺及び下垂体への障害・免疫低下・行動障害に結びつけられるように見える。
カナダ医学界雑誌Canadian Medical Association Journalに発表されたカナダの研究は、1999年に気づかれた精巣癌の年間平均2%の増加の主原因の一つが汚染であることを示している。71
別な研究結果は、子供の発達と胎児発達は特に農薬に影響を受けやすいことを指摘している。72
ケリー=マーチン博士は次のように述べている:
...内分泌かく乱は大きな問題である。
動物実験で、農薬に曝された場合動物で陰茎の発達がないこと又は、陰茎と陰核の中間の何物かを持つことが良く知られている。
子供で、精巣の下降がない停留睾丸及び正常な精子数がないことを知っている。私たちは社会一般にそれらがあることを知っている。
それは非常に重要な問題であるが、それをこれらのものに結びつけることは非常に困難である。
私たちには資金がなく、それで研究はされていない。
しかし明らかに動物の研究で、それは非常に大きな懸念であり、このことに関する人間での証拠を更に得るために多くの人々から大きな強い求めがある。