・農薬の長距離輸送:残留性有機汚染物質(POPs)
Long-Range Transportation of Pesticides: Persistent Organic Pollutants (POPs)
4.4 イヌイット環極地会議及びカナダイヌイット=タピリサット(訳注:イヌイットの政治組織)が提供した情報によると、北極(北緯60°より北の領土、実際には北極と亜北極地域を含む)で検出された80%の汚染物質は、カナダ以外の諸国から来たと思われる。27
長距離輸送のサイクルを通じ、特殊な物理的化学的性質と組み合わさって、風は一部の農薬及びPOPsを北極のような遠くまで運んだ。29
本委員会は、POPs(人間活動の結果として環境中に存在する化学物質)は次の3つの性質があることを知った:それらは半揮発性であり、残留性、脂溶性である。
それらは半揮発性で、高温で固体からガス状態へ容易に移り、部分的に蒸発し、風によって運ばれ、次に冷たい北極の空気の影響下で凝縮し、大地に沈着する。
汚染物質が北部に達した場合、冷たい温度は再び蒸発するのを妨げる。POPsはこのサイクルを及び、一連の長距離「ジャンプ」を何回も繰り返すことができ、それは「バッタ効果」と名づけられている過程を導く(図4.2)。POPsは通常の環境条件下で分解に抵抗するので残留性である。
4.5 POPsは脂溶性であるが、ほとんど水に不溶性であり、そのため生物は排泄できず、このためPOPsは組織に蓄積する。
生物濃縮は、有毒物質が時間とともに生物の生きている組織中に集まる、この過程を述べる用語である。
生物が汚染されている植物や動物を食べ続けるにつれ、汚染物質は蓄積を続け、汚染物質濃度は食物連鎖の栄養段階を物質が通過するにつれ増加する。このことは生物拡大として知られている(図4.3)。
POPsは生物的拡大することが知られている。POPsは生物濃縮されることが知られている。
カナダインデアン北部業務省Indian and Northern Affairs Canadaの北部科学汚染物質研究所長Northern Science and Contaminants Research Directorateダビット=ストーン博士が本委員会に次のように説明した:
第一に、私たちが心配している有機塩素農薬は、残留性であるという性質を共有しているために、残留性有機汚染物と呼ばれる。
それらは正常な環境条件で分解に抵抗する。それらは半揮発性であり、これは非常に重要な性質である。それらは固体又は液体・気体のどれかであることを基本的に決定できないことを意味する。
化学的性質から思い出すように、それは常に温度依存性である。
それで暖かい温度でこれらの物質は大気中に入るだろう。冷たい温度でそれらは大地に落ちてくるだろう。
最後に、それらは脂溶性であり、非常に低い水溶解性は非常に低い。
私たちの体は、尿中に排泄する水溶性物質に変えることによって好ましくない汚染物質を除去するように設計されている。
脂溶性物質について、そのメカニズムは働かず、時間とともに増加する傾向がある。
食物連鎖中で、このことは食物連鎖中の高いレベルで極めて異常な濃度になりうることを意味する。