影響指標については,多くの先行研究は自覚症状と血圧,脈拍などの生理指標を重視しているが,本研究では石川らが重視している神経眼科的な検査を加えた.
しかし,瞳孔反応検査については,長谷川ら14)は有意な差を認めず,小倉ら28)は一定の傾向を得られないとし,本研究においても先行研究同様に有意な変化を示さなかった.
本研究において影響指標とした瞳孔反応検査は,環境省研究班も用いているが,小川ら37)は,変動が大きく,定量的な臨床検査としての信頼性には疑問があることを述べている.
本研究においても,曝露前と0ppb,2 セッションの曝露前でT5 の200ms を超える大きな変動が見られ(図3),反復測定した際の個人内変動が大きいことが示唆された.
石川19)は,神経眼科誌に瞳孔反応検査の正常値について述べているが,2 種の集団から得られたデータである表1 と表2 において,縮瞳率CR,縮瞳速度の最高値VC,散瞳速度の最高値VD,T2 の数値が著しく異なっている.
須藤ら38)は,同じ機器を用いて,肺気腫患者における自律神経機能を調べる目的で瞳孔反応検査をおこなったが,健常人のT5 は概ね700~1,000 台で外れ値を含めて平均1,157ms であり,石川19)が述べている1,500ms 前後(表1)とも1,600ms 前後(表2)とも異なる.
彼らが示した健常人のT3 は600ms 前後で,石川が述べている表1 の650ms 前後に近いが,表2 の950ms 前後とは大きく異なる.
このように,本法は同じ機器を用いながら個人間,個人内でも大きく変動する検査であることから,検査結果の慎重な取扱が必要である.
結論
FA 曝露およびT 曝露において,何らかの症状あるいは神経眼科的検査で陽性の所見を示した患者は皆無であり,仮説「化学物質によりIEI の患者は自覚症状,各種生理検査,特にIEI の診断に有用とされた検査に変化があらわれる」は棄却された.
このことはIEI 患者における症状等が化学物質によらない可能性を示唆している.
また,瞳孔反応検査は個人間,個人内でも大きく変動する検査であり,検査結果の慎重な取扱が必要である.
謝辞:本研究は,労災疾病13 研究のうち「化学物質の曝露による産業中毒」分野「シックハウス症候群の臨床的研究・開発,普及」
(平成16~20 年)の研究として実施された.
前関西労災病院環境医学研究センター長である後藤浩之先生
(現,ごとう内科クリニック),当院シックハウス診療科看護師である大下歩,三浦千香子の両看護師に深謝いたします.
参考文献省略、PDFをご覧ください。
runより:とても簡単に言うと石川、宮田先生批判としか思えないですね。
まるでNATROMの様ですが関西地方にはそういう動きがあるんです。
むしろNATROMは関西の影響を強く受けている感じがします。