・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
NEWS LETTER Vol.78
・スーザン・ハフマンズ
PANについて
国際農薬行動ネットワーク(PAN)ドイツは
1984年に設立された非営利組織であり、世界90カ国で600機関が活動している国際農薬行動ネットワーク(PAN)の一部である。
主に、農薬(薬業用途・農業外用途)に関する情報の提供、化学物質による植物保護や害虫管理に対する代替案の支援、政策提言等を行っている。
以前の農薬規制の問題点
農業で農薬を使用することで、職業的使用者(農家・害虫処理業者)およびその家族、たまたま近くにいたために農薬散布のドリフトによるばく露や定期的散布地域に住居する人に対するばく露量が高くなることがあり、ドイツでは、パーキンソン病が職業病として認定されている。
農薬は環境全体に広がり、食品中にも残留し、低用量であっても慢性的影響のリスクがある。
拡散した農薬は水質を汚染し、水生態系に悪影響を及ぼしている。
以前のEUの農薬規制は、約40年前から、農薬の販売前の試験・承認・許可、職業的使用者に資格検査等の義務付けを行ってきが、ヨーロッパの農業地域の95%以上で農薬が使用されており、農薬への依存は高い。
EUの新たな農薬規制
以上のような状況を変えるため、農薬使用の低減
化を目指して、EUでは2009年に、農薬の上市(注に関する規制(1107/2009/EC、以下「上市規制」)と、農薬の持続可能な使用(SUD)に関する指令(2009/128/EC、以下「SUD」)が導入された。
上市規則では、制限(カットオフ)基準をリスクベースからハザードベースに移行させ、制限(カットオフ)基準にかかったものは上市できなくなった。
上市の承認期間は、これまでの10年から7年に短縮された。
また、ミツバチについては、慢性的な影響も考慮されるようになった。
次に,SUDは農薬使用について、空中散布禁止、訓練基準、化学物質に頼らない病害虫の総合的管理技術(IPM)案において、これまでは各国ごとに異なっていたものをEU域内での統一化をはかり、農薬のより持続可能な使用の実現を目指した。
新しい農薬規制に基づき、本当に農薬への依存度が下がるかどうかは、IPMを厳格に規定し、代替品の調査や有機農業をどれぐらい本気で支援するかということによって大きく左右される。
ネオニコチノイドの規制
ミツバチは、世界の16%以上の植物の受粉に関与しており、食糧生産に貢献している大変重要な昆虫である。
ところが近年、ヨーロッパではミツバチが減少している。
ミツバチに悪影響を与える要因はいろいろあるが、農薬の影響が考えられる。
ネオニコチノイド系農薬には、ミツバチに対して高い急性毒性を持つことが明らかになっているものがある。
EU加盟国のうち、スロベニア、フランス、ドイツ、およびイタリアの4つの加盟国が蜂に有害な数種類の農薬を一時「禁止」するという法的措置をとった。
イタリアでは禁止に伴い、モニタリングを実施したところ、農薬処理された種子を使用しなくても害虫による大きな被害がなく、ミツバチの損失は37.5%からおよそ15%に減少するという結果となった。
このように各加盟国の法的措置の甲斐があって前向きな結果も出ているが、まだなすべきことは多く残っており、リスク管理の改善や被害予防の強化などが課題である。 (報告:成嶋 里香)
環境保全型農業推進のための国際市民セミナー報告
(注)上市とは、ある商品を市場に出すということ。
runより:いつも思うのですが欧州は環境問題に敏感ですね。
車だって欧州規格とか作れるのにな~んで日本は甘いんだろう?