b.一方、フェニトロチオン(MEP)についてはラットを用いた亜急性吸入毒性試験の最大無作用量が確認されていることから、肺吸収と腸管吸収の差及び肝初回通過効果については、MEPで求められた吸入曝露による最大無作用量と経口曝露による最大無作用量の比(1/4)を用いることにより一定の評価を行うことができると考えられる。
なお、MEP以外の農薬については、当該農薬の尿中排泄率とMEPの尿中排泄率の比を用いて、上記最大無作用量の比をさらに補正することにより、農薬ごとの性質をある程度反映した評価が可能になると考えられる。
② 吸入以外の曝露経路について
航空防除農薬の一般環境における曝露経路として、経皮吸収は呼吸器経由の曝露に比べてわずかであると考えられるので、主として吸入による影響を対象に評価することが可能と考えられる。
③ 混合製剤の毒性について
現在、農薬については登録申請の際に「農薬の登録申請に係る毒性試験成績の取扱いについて」(昭和60年1月28日付59農蚕第4200号農林水産省農蚕園芸局長通知)の別添「農薬の安全性評価に関する基準」の別表に基づき、原体についての急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、発がん性、繁殖、催奇形性、変異原性等に係る試験成績の他、製剤について急性経口毒性、急性経皮毒性、急性吸入毒性、眼一次刺激性、皮膚一次刺激性及び皮膚感作性の各試験成績が提出され、安全性評価が行われている(参考資料8)。
当該通知は混合製剤にも適用されるが、混合製剤については評価の結果、複数の有効成分の投与による相乗作用が示唆された場合には、さらに追加の毒性試験等の実施が求められることとされている。
しかしながら、混合製剤でこれまで実際に相乗作用が示唆されて追加試験を行った例はないこと、及び航空防除で曝露する程度の低濃度では相乗作用は問題にならないと推定されることから、混合製剤については相加作用のみを考慮すれば十分であると考えられる。
相加作用については、次式によりその毒性を評価することとし、Iの値が1を超える場合に、気中濃度評価値(「3.気中濃度評価値の設定」を参照)を超える曝露と判断することが適当であると考えられる。