低線量放射線の次世代への影響:講演を聴いて | 化学物質過敏症 runのブログ

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講演を聴いて――環境化学物質と放射性物質の研究の遅れ:複合汚染問題と予防原則
 井上先生の「確率的影響」のお話を聞いて、まさに「目から鱗が落ちる」思いをした。

福島の事故直後、私自身も大部分の方々と同じく「どのくらいの放射線をあびると、どのような健康被害がおこるのか」についての確かな情報を求め右往左往した。

何が起こるかの科学的情報では、チェルノブイリで何がおこっていたかが重要なことはすぐわかった。

昨年の故綿貫礼子さん、吉田由布子さんの講演で、沢山の疫学調査があるが、ロシア語のものが多いこともあり不当に無視されていることも知っていた。

しかし、国際放射線防護委員会(ICRP)の安全とされる線量基準の算定が怪しげであることはわかっても、内部被ばくなどの科学的説明がかくも不十分なのに、なぜ、ゆるい基準が一応認められているのか、過小評価の科学的背景がよくわからなかった。

一方、より厳しい欧州放射線リスク委員会(ECRR)の勧告もすぐに見つけたが、線量を人体影響に換算する係数の設定が国際基準と大きく異なる理由は「各種被害症例の調査データを説明するため」とされ、算出の根拠が私には理解できなかった。
 放射線により破壊損傷されるのがDNAだけではなく、衝突したあらゆる生体内分子であることは、考えれば当然なのだが、先生に指摘されるまで軽く見ていた。

どこが破壊されるのかは確率的(バラバラ)なので、当然、影響も個体毎に多種多様、“がん”になるかも、どんな“がん”になるかも、“がん”以外の病気や障害も個体毎にバラバラに一般に低い頻度で起こる。

チェルノブイリなどでの放射線健康被害も広範に起きていたのだが、多様な症状が基本的にバラバラに低頻度で起こるので、個々の症状別にまとめると、それぞれの症例数が少なくなる。

内部被ばくを含めた被ばく線総量が個人毎では正確には測りにくいこともあり、甲状腺がんのように頻発する症例、目立ちやすい症例を除き、症例数が少ないものは、放射線ばく露との相関は統計的には認められないとして葬り去られてしまっていたのだ。

本来、人体への毒性を予見し、被害の発生を未然に予防するための、マウスなどの動物をつかった実験も放射線では「確率的」であるため結果がきれいに出ず、研究が遅れていたのだ。
 研究の遅れ不十分さから、安全でないものを安全としてしまい多数の被害者を出してきた歴史は、化学物質でも水俣病以前から始まり環境ホルモンや農薬まで、数多く繰り返されてきた。

専門家でない一市民として私自身が放射線に関してとった行動は、安全と信頼できる放射線量の確実な情報がまだないので、「食品の産地を選ぶなど、事情の許す限り放射線汚染されないように努める」予防原則に基づくものだった。