ハウスダスト中の化学物質
ハウスダストの摂取量や含まれる化学物質のリスクを適切に評価するためには、再現性のある化学分析データが不可欠です。
そこで、ダストの標準的な代表試料の調製方法を提案することを目的に、一般家庭5軒から通常使用されている掃除機にたまっていたごみを研究用の試料として提供していただき(HD-01~HD-05)、臭素系難燃剤PBDEsの蓄積特性を調べましたのでご紹介します(臭素系難燃剤については、2008年8月号「臭素化ダイオキシン類の発生源としての難燃剤」、2009年4月号「家庭製品中の難燃剤の室内環境への影響」2011年12月号「POPs条約におけるPBDEsの位置づけ」参照 )。
何をハウスダストと定義するか。
そこがまず問題になります。
ここでは、掃除機ごみから毛髪や小石、木片、紙屑等の夾雑物を可能な限り除去したものをハウスダストと定義しました。
掃除機に吸い込まれたものは何でも入っていますので、ペットの毛、小さなおもちゃのブロックや小銭、輪ゴム、シール、紐、商品タグ、お米などの食品カス、などなど。
虫の死骸が入っていることも珍しくありません。
それらは夾雑物として一つ一つ手作業で取り除きました。
夾雑物除去後のハウスダスト試料は、ふるいを使って「>2000 µm」、「1000~2000 µm」、「500~1000 µm」、「250~500 µm」、「106~250 µm」、「53~106 µm」、「<53 µm」の7段階の粒径に分けました。
ふるいを掛けた後にも毛玉状の綿埃が分離して存在していたため、粒子状ダストと繊維状ダストを可能な限り分けて回収し、それぞれの重量を測定して分析試料としました。
図1 ハウスダストの粒径別重量分布
その結果、どの家庭においても粒子状ダストと繊維状ダストの重量はほぼ同程度で、そのうち、粒子状ダストには2000 µm以上の粗大粒子がほとんどなく、53 µm以下の微細粒子の割合が最も大きいことがわかりました(図1左)。
一方、繊維状ダストは2000 µmの開き目のふるい上に回収された毛玉状の塊の重量比率がもっとも多く、53 µm以下の画分にはほとんど見いだせませんでした(図1右)。