・出展;国立環境研究所
http://www.nies.go.jp/index-j.html
・オンラインマガジン
2013年3月号
ハウスダストの組成とPBDEsの粒径分布:代表的な試料を得るために
梶原 夏子
ハウスダストに対する私たちのとりくみ
ハウスダスト、つまり室内の"ほこり"は、少し目を離したすきに床や家具、家電製品の周辺などに大量にたまってしまう厄介なものです。
見た目に厄介なだけでなく、アレルギー性疾患を誘引したり(本号「ハウスダストとアレルギー」参照 )、電気製品の故障の原因になったり、ときには電源プラグ付近に堆積したハウスダストが火災を引き起こしたりするので、家庭や学校、職場の衛生環境を維持するために、ハウスダストの除去作業、すなわち掃除は欠かせないものです。
さらに、10年ほど前からハウスダストを介したヒトへの化学物質の取り込みの重要性が指摘され始め、私たちも研究テーマとして取り組んでいます(2006年12月号「ハウスダスト研究(ほこりの研究)」、2012年8月号「ハウスダスト中の臭素化ダイオキシン類」参照 )。
複雑なハウスダストの成分
そもそもハウスダストとは、どんなものから構成されているのでしょうか。
おおまかに20種類の分類を示している研究例があります。
皮膚、花粉、土、スス、灰、繊維、植物片、などなど。つまり、ハウスダストとはいろいろなものが複雑に混ざった混合物ということです。
実際に我々の研究で使用したハウスダストの写真を示します(写真1、2)。一目見ても、綿埃のような繊維状のものと砂粒のような粒子状のものが様々なサイズで混ざり合っていることがわかると思います。その不均一で複雑な"ダスト"の中に含まれている化学物質の種類や濃度を正確に調べるにはどうしたらよいのでしょか。
綿埃と粒子状ダストをいっしょのまま研究用試料として取り扱ってよいのか?、粒子サイズの違いによって濃度は変わらないのか?といった疑問が当然わきます。
ところが、ダストというのはとにかく複雑で、これまで研究者によってダストの定義はもとより、粒子サイズや繊維状物質の扱いについて一貫した見解が示されてきませんでした。
写真1 研究に使用したハウスダストの写真