微粒子に付着した多環芳香族炭化水素と越境大気汚染 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出展;国立環境研究所
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【環境問題基礎知識】
微粒子に付着した多環芳香族炭化水素と越境大気汚染 佐藤 圭

はじめに

多環芳香族炭化水素( Polycyclic Aromatic Hydrocarbon: PAH)は,二つ以上のベンゼン環を持つ化合物の総称です。

PAHは,主に有機物の不完全燃焼によって発生し,スス等の微粒子に付着して有機エアロゾル粒子として大気に排出されます。

日常用いる工業製品(精油,潤滑油,殺虫剤,接着剤及び塗料等)にも揮発性のPAHが含まれていますが,これらがガスとして大気に排出されることもあります。

PAHやその酸化で生成する派生物の多くは毒性を持ちます(図)。

たとえば,国際がん研究機関(IARC)は,2009年現在,15種のPAHが発がん性を持つ可能性があると報告しています。

PAHは,都市大気汚染に関わる汚染物質のひとつです。

東アジアの経済発展が続く中で,PAHによる大気汚染は,越境大気汚染の観点からも議論されるようになっています。

本稿では,PAHの越境大気汚染に関する最近の議論をご紹介したいと思います。


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図 毒性が指摘されているPAHやその派生物

多環芳香族炭化水素の排出源

PAHの排出源は,エネルギー利用や産業の違いによって国ごとに異なります。

どこからどれだけの大気汚染物質が排出されているかを示す一覧を排出インベントリーと呼びます。

北京大のチャンとタオが今年発表した排出インベントリーによると,我が国をはじめとする先進国では,工業製品の使用,運輸用オイルの燃焼及び廃棄物の焼却等によってPAHが排出されるとあります(ただし,放射性炭素を観測した東京薬科大の熊田らは,2006年の論文で東京近郊の大気中に観測されるPAHの2~4割がバイオマス燃焼に由来するとしており,上記インベントリーとの食い違いが問題になっています)。