・4)PM10の微小粒子分画の指標をPM2.5とする
上述のように、PMの粒径分布は二峰性を示し、微小粒子モードと粗大粒子モードの間で最小質量を示す粒径は一般に1µmと3µmの間にあり、このサイズ範囲内で特定の粒径を選ぶのは、政策判断であるとし、スタッフは、地域保健の研究との一貫性、粗大分画粒子が微小分画に侵入する可能性の制限及び測定技術の利用可能性を考慮して、2.5µmのサンプリング・カット・ポイントを推奨した。
PM2.5は、ほとんどの硫酸塩、酸、微小粒子の遷移金属、有機物及びUFPsを含む微小分画中の重要な潜在的因子のすべてを包含しているので、EPAは、PM2.5が微小粒子基準の適切な指標であると結論した。
2.PM・PM2.5の健康影響研究
―これまでの研究、EPAの最近の動向と将来研究―
1)これまでの研究
EPAは、2009年12月にPMに関する人の曝露、毒性及び健康と福祉への影響に関する科学的情報を整理したISA for Particulate Matter6)を公表した。このISAは、従来のCDとStaff Paperを一緒にしたものである。
そのなかで、PM2.5、PM10-2.5及びUFPsへの短期及び長期間曝露とさまざまの健康影響の指標との関連の因果性を、以下に示すように評価している。
因果関係の評価は、PMへの短期及び長期間曝露に関連した健康影響を調べた疫学、人の臨床及び動物の中毒学的研究結果をISAで記載されている原因決定のための枠組みに従ってなされている。
従来、大気汚染物質の主たる健康影響は、主要大気汚染物質に気道刺激性があるために呼吸器への影響が主たる関心事であったが、PM2.5の健康影響像は、次表に示すように多様である。例えば、心血管系への影響は、1996年のCD1)では、PMへの急性曝露が心血管疾患の罹患に及ぼす影響について具体的に検討している情報はほとんど存在しなかったので、“心臓病については関連性が示唆されるが、結果はわずか2件の研究に基づくもので、推定される影響は、他の評価項目の影響より小さい”と結論されている。
しかし、その後、大気中のPMへの短期及び長期間曝露と心血管系の罹患や死亡に関する疫学研究が、数多く発表され、また、その影響の発生機構に関する中毒学的研究も数多く発表され、2009年のISA6)は、PM2.5への短期及び長期間曝露と心血管系への影響との間には因果的関連が見られると結論している。表に示すようにPMの健康影響は多様で、最近では、中枢神経系への影響も注目されてきている。