・朝日新聞2013年2月20日 大気汚染物質「PM2.5」削減策、国内も不十分
中国での深刻な大気汚染が新聞やテレビで伝えられている。
その主な原因は微小粒子物質PM2・5。
日本でも基準値超えが相次ぐが、実は今年に始まったわけではない。
中国からの飛来による影響もあるが、国内の対策もまだ十分とは言えない状況だ。
「35マイクログラム(1立方メートル当たりの日平均環境基準)を超えたら国民はどう行動したらよいのかを、国は示してほしい」。
高島宗一郎・福岡市長は今月8日、PM2・5対策の強化を求めて、環境省の井上信治副大臣に訴えた。
そのうえで、大陸に近い九州共通の問題として、中国の大気汚染との関係の調査を求めた。
福岡市では今年、PM2・5が日平均で基準を超えたのは2月18日までに3日間あった。
基準超えの日は昨年の方が多かったというが、当時は大きな問題にならなかった。
全国的な傾向も昨年の状況とほぼ変わらず、今年になって悪化したのではない。
しかし、中国の影響が話題になったことでPM2・5が国民的な関心を呼び、国内でも環境基準に達していない状況が今回、皮肉にもクローズアップされた格好だ。
福岡市は統計データをもとに、一日の平均値が国の基準を超える公算が大きいのは、午前6時時点で39マイクログラムを超えた場合と分析。
その場合は午前6時以降、呼吸器系疾患のある人に外出時のマスク着用など注意喚起している。
日本が環境基本法に基づいてPM2・5の環境基準を設けたのは2009年9月。同様の基準が1997年からある米国にならい、監視態勢を整備し始めたのはほんの3年前からに過ぎない。
PM2・5は、発生源が工揚や車、山火事の煙、火山の噴煙などと多様だ。
窒素酸化物(NOX)など過去の化学物質規制に伴ってある程度まで削滅できてきたが、それ以上の対策は難しいとされる。
その一方で、肺がんなどのリスクがあるものの、基準超えが健康影響に直結するとも言い切れない。
そのため、削滅の具体策などは、ほぼ手つかずのままだったのが実情だ。
国立環境研究所の新田裕史・環境健康研究センター長は「これまでの大気汚染対策はNOXなど個別の物質の規制だったが、今後はすべての物質の規制をさらに強化し、綱羅的に減らす必要がある」と指摘する。(森治文)