・V. 予防行動の例
国際合同委員会
恐らく最も注目に値する米国での予防原則適用は、五大湖地域で起こっている。
五大湖は、水域への残留性有機化合物の放出によって長年脅かされてきた。
1970年代後期、米国とカナダは、五大湖から残留性化合物の放出を実質的になくす目標を設定した、五大湖水質合意*に署名した。
この合意のもとで、国境沿いの水域を守るために設立された、100年間に渡る2年ごとの集まりが、湖の質と質に対する脅威に関して研究を行い声明を出すために、国際合同委員会が設立された。
第6回五大湖水質に関する隔年報告(1992)*で、合同委員会は五大湖で残留性生物濃縮物質により生じた損害と、そのことを処理する重大な必要性に注目している。
また、委員会は環境中の同化能力の概念に基づいて残留性生物濃縮物質を管理しようとした試みが、みじめに失敗したことを認めている。
委員会は、五大湖生態系ですべての残留性毒物の段階的禁止を要望し、次のような声明を出した。
このような戦略は、急性あるいは慢性的損害が普遍的に受け入れられても受け入れられなくとも、あらゆる残留性毒物は環境に危険であり、人間の健康に有害であり、そしてもはや生態系は耐えることができないことを、認識すべきである。
委員会の米代表にブッシュ大統領から任命されたゴードン=ダンヒルは、1998年1月のウイングスプレッド会議で、委員会がどのようにして次の結論に達したかを思い出している。
「我々委員会が、科学者に、人々や野生生物に関する汚染の影響について何を知っていたかをたずねた時、科学者は確実なことは知らないというだろう。最後に、我々は、膨大な経験と観察に基づいて、科学者が信じていたことが起こったかをたずねた。次に、様々な経歴の科学者が話したことは、排出をなくすことを試みるために、それらの影響を私たちは十分知っていると確信した」。
マサチュウセッツ州での毒物使用削減
マサチュウセッツ州毒物利用削減法は、予防原則の突出した例である。1989年に通過し、この法律は、特定な量の、約900種の産業化学物質を使用する製造業は、これらの化学物質の使用を削減する方法をはっきりさせるため、2年ごとに計画を作ることを求めている。
予防行動の良い例となる、毒物利用削減のいくつかの側面がある。
目標設定.マサチューセッツ州は50%の有毒副産物(廃棄物)削減目標を設定した。
かわりのもの。
産業施設に「安全」使用レベルをはっきりさせることを指示するのではなく、法はどんな使用量でも多すぎると考える。
会社は、かわりのものが実際により良いことを確保するために、自分たちが特定の化学物質を使う理由と方法を理解し、包括的に財政・技術・環境・職業衛生安全に関して、実行できるかわりのものの分析を行うことを求めている。
モニタリングと報告。会社は、有毒化学物質利用削減で、毎年の進歩を評価することが求められている。
責任。
かわりのものを突き止め、この化学物質の影響を分析する責任は企業にあるが、マサチューセッツ州は、有毒化学物質利用削減を確実に前進させるために、支援と支援金を提供する。
企業は何らかの特定の選択肢を選ぶことを命令されないが、多くの例で経済的利益と、環境・健康・安全の利益は、活動を十分に正当化する。
化学物質購入や運搬・廃棄物処理に関連する経費は非常に高い。
1990年~1995年までに、マサチューセッツ州内の会社は有毒化学物質放出を3分の2より多く、全化学廃棄物を30%まで、全使用量を20%まで減した。この法はマサチューセッツ州の産業に、この計画によって得られた一般人の健康や環境の利益を別として、約1500万ドルを節約させた。