・3. 臭素系及び塩素系難燃剤に関するサンアントニオ宣言
2010年9月に米テキサス州サンアントニオでダイオキシン世界会議が開催され、会議の参加者の多くが臭素系及び塩素系難燃剤についての懸念を表明し、22カ国からの150人近くの科学者らが下記の声明に署名しました。
この中には日本からの科学者も含まれています。
【サンアントニオ宣言】
我々、様々な分野の科学者は下記について宣言する。
ストックホルム条約の加盟国は世界的な廃絶のために同条約にリストされている3種類の臭素系難燃剤について廃止のための措置を実施している。これらの物質は、ヘキサBB(ブロモビフェニル)、商業用ペンタBDE(ブロモジフェニルエーテル)、及び商業用オクタBDE(ブロモジフェニルエーテル)の成分を含んでいる。
もうひとつの臭素系難燃剤であるHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)は評価中である。
多くの臭素系及び塩素系難燃剤は、環境中で長距離移動を行なう。
多くの臭素系及び塩素系難燃剤は、残留性、生物蓄積性があり、その結果、人の母乳を含んで、食物連鎖汚染をもたらす。
多くの臭素系及び塩素系難燃剤は、適切な毒性情報が欠如しているが、利用可能なデータによれば懸念がある。
多くの臭素系及び塩素系難燃剤は、包括的な毒性情報が欠如しているにもかかわらず、製品中に組み入れられている。
様々な製品中に存在する臭素系及び塩素系難燃剤は、屋内及び屋外の環境中に放出されている。
寿命の尽きる、又は尽きた電気電子製品は開発途上国に投棄されているので懸念が高まっており、有害な成分の違法な国境を越える移動をもたらしている。
これらには臭素系及び塩素系難燃剤が含まれる。
ほとんどの開発途上国及び移行経済国では、環境的に適切な方法で電子廃棄物を取り扱う能力が不十分であり、ヒト健康と環境に危害を及ぼす有害物質の放出をもたらしている。
これらには臭素系及び塩素系難燃剤が含まれる。
臭素系及び塩素系難燃剤には火災毒性があるが、耐燃に役立つ全体的な利益はまだ証明されていない。
臭素系及び塩素系難燃剤が燃えると、高い毒性のあるダイオキシンやフランが生成される。
したがって、これらのデータにより下記の正当性が支持される。
臭素系及び塩素系難燃剤は、残留性、生物蓄積性、長距離移動、及び有毒性を持つ。
サプライチェーン中の製品及び各製品のライフサイクルにおける臭素系及び塩素系難燃剤、及び他の化学物質に関する情報の利用可能性とアクセスを改善する必要がある。
消費者は、例えば製品ラベルを通じて、これらの物質の存在を知らされるなら、有害難燃剤の代替物質の採用にある役割を果たすことができる。
難燃剤の代替物質を特定するプロセスは、単に代替化学物質だけでなく、製品設計、製造プロセス、難燃剤の使用を必要としない実施方法のための革新的な変更も含むべきである。
現状の、及び代替の化学物質の難燃剤は、変異原性や発がん性、あるいは生殖系、発達系、内分泌系、免疫系、神経系への有害影響などの有害特性を持たないことを確実にするための努力がなされるべきである。
難燃剤のある用途のための例外使用を求める時には、その例外使用を求める団体はなぜそのような例外が技術的に又は科学的に必要なのか、及びなぜ潜在的な代替が技術的に又は科学的に実行可能ではないのかを示す情報;この化学物質の必要性をなくす潜在的な代替プロセス、製品、材料、又はシステムの記述;及び調査した出典のリストを提供すべきである。
残留性有機汚染物質(POP)の特性を持つ難燃剤を含む廃棄物や製品/成形品は、POP特性を再び持つことがないよう、POP含有物が破壊され又は非可逆的に転換されるような方法で処理されるべきである。
POP特性を持つ難燃剤は、回収、リサイクル、再生利用、直接再使用、又はその物質の代替使用をもたらすかもしれない処理の対象としては許可すべきではない。
POP特性を持つ難燃剤を含む廃棄物は、POP含有物が破壊され又は非可逆的に転換されるような方法で処理されるのでない限り、国際的な国境を越えて移動させるべきではない。
電気電子製品を含んで、POP特性を持つ難燃剤を含む製品のライフサイクル管理において、製品スチュワードシップ及び拡大生産者責任の適用を検討することが重要である。
4. 難燃剤の使用に関する調査の例
▼難燃材処理発泡材(フォーム)は火災安全の役に立たない
多くの家具や電子機器の筺体には有害な難燃剤が使用されていますが、米消費者製品安全委員会が最近実施したテストについて2012年5月6日付けChicago Tribune は次のように報道しています。
布張りの椅子で、難燃剤処理をしたものと、しないものを火災テストで比較したところ両方とも同じように4分以内に炎に包まれ、難燃剤による効果はないことが判明した。
一方、難燃剤ではなく、耐燃布バリアを布張りと発泡材の間に入れて点火したところ、4分後には椅子の背中の部分を焦がしただけであった。
火災犠牲者のほとんどは炎ではなく煙を吸い込んで死亡するが、両方の椅子の燃焼による煙はほぼ同量であった。
布張り/革張り家具中の難燃剤は有害なだけで、何も役に立たないことを示した。
▼赤ちゃん/子ども用品発泡体の80%に難燃剤
2011年5月20日のNature Newsによれば、米デューク大学の研究者らは、難燃化学物質が赤ちゃんや子ども用品中の発泡体でどのように使われているか、そしてどのような化学物質が存在するかを見つけるために、子ども用カーシート、赤ちゃん用マット、ベッド柵マットなどを調べました。その結果、発泡体の80%から様々な難燃化学物質が検出されましたが、最も共通していたものは、TDCPP(トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)リン酸塩)であり、アメリカでFiremaster 550 という商品名で広く使用されている難燃剤です。TDCPPの毒性はラットで発がん性が認められていますが、全体として情報量が少なく、ヒトへの影響もよくわかっていません。